【障害者手当】とは? – 制度の概要
「障害者手当」と一口に言っても、実はいくつかの種類があり、国や地方自治体から、心身に障害のある方やその方を養育している方に対して支給される経済的な支援制度の総称です。
これは、障害があることによって生じる特別な負担を軽減し、生活の安定を図ることを目的としています。
単に「障害があるから支給される」というものではなく、障害の種類や程度、ご本人の状況、そして申請する手当の種類によって、詳細な要件が定められています。
この手当は、障害年金とは異なる制度であり、併給が可能な場合もあります。障害の種類(身体障害、精神障害、知的障害、難病など)や、その程度(重度・中度など)、そして年齢などによって、どの手当が対象となるかが変わってきます。
【障害者手当】どんな種類がある? – 国と自治体の手当
障害者手当には、主に国が法律に基づいて実施しているものと、各地方自治体が独自に条例に基づいて実施しているものがあります。
自分がどの手当の対象になる可能性があるのかを知ることは、適切な申請を行う上で非常に重要です。
国が支給する主な手当
国が支給する障害者向けの手当としては、重度の障害がある方を対象としたものが中心です。代表的なものとして、以下の二つが挙げられます。
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特別障害者手当
これは、精神または身体に著しく重度の障害があり、日常生活において常時特別の介護が必要な20歳以上の方を対象とした手当です。
具体的には、複数の重度障害が重複している方などが想定されています。ただし、施設に入所している場合や、病院に3ヶ月以上入院している場合は、原則として支給対象外となります。 -
障害児福祉手当
精神または身体に著しく重度の障害があり、日常生活において常時介護が必要な20歳未満の児童を養育している方を対象とした手当です。
特別障害者手当と同様に、施設に入所している場合などは支給対象外となります。
これらの手当は、国の制度ですが、申請の受付や支給事務は、お住まいの市区町村が行います。
自治体が独自に支給する手当
国の制度とは別に、多くの地方自治体(都道府県、市区町村)が、独自の判断で障害のある方への手当を支給しています。
これらの手当の名称、対象者、支給額、所得制限などの要件は、自治体によって大きく異なります。
- 例:〇〇市心身障害者福祉手当、△△県重度障害者手当など
自治体独自の手当は、国の手当よりも対象者の範囲が広かったり、国の手当と併給できたりする場合もあります。
ご自身の状況に合わせて、お住まいの自治体にどのような手当があるかを確認することが非常に大切です。
【障害者手当】誰が対象になる? – 詳細な受給要件
障害者手当の対象者は、申請する手当の種類(国、自治体、そしてそれぞれの手当ごとの規定)によって細かく定められています。
ここでは、国の特別障害者手当と障害児福祉手当を例に、主な要件について説明します。自治体独自の手当については、各自治体の情報を確認してください。
対象となる障害の程度
国の特別障害者手当、障害児福祉手当ともに、「精神または身体に著しく重度の障害があり、日常生活において常時特別の介護が必要」という要件があります。
これは、単に「障害者手帳を持っている」というだけでなく、その障害の程度が非常に重く、複数の障害が重複している場合などが該当しやすいです。
具体的には、以下の障害の状況などが考慮されます(例示であり、これに限定されるわけではありません)。
- 両眼の視力の和が0.04以下の者
- 両耳の聴力レベルが100デシベル以上の者
- 両上肢の機能全廃の者
- 両下肢の機能全廃の者
- 体幹の機能全廃の者
- 上記と同程度以上の障害(内部障害、精神障害、知的障害などを含む)が2つ以上重複している場合
どの程度の障害がこの要件に該当するかは、医師の診断書や専門家の意見に基づいて判定されます。多くの手当で、障害者手帳の等級(例:身体障害者手帳1級、2級など)が判断基準の一つとなりますが、手帳の等級だけで自動的に支給が決まるわけではありません。
年齢制限について
国の特別障害者手当は20歳以上、障害児福祉手当は20歳未満の障害がある方が対象です。
これは、20歳を境に障害年金などの別の制度が対象となる可能性があるため、手当の対象者が分けられています。
自治体独自の手当については、年齢制限が設けられている場合とそうでない場合があります。
所得制限について
障害者手当は、国のもの、自治体のもの問わず、多くの場合、所得による制限があります。
これは、税金が財源となっているため、より経済的に支援が必要な方に支給を限定するためです。
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国の手当の所得制限
特別障害者手当、障害児福祉手当ともに、申請者本人、配偶者、扶養義務者(同居している父母や兄弟姉妹など)に前年の所得状況に応じた所得制限基準額が設けられています。
この基準額は、扶養している親族の数などによって異なります。基準額を上回る所得がある場合は、手当が支給されません。 -
自治体独自の手当の所得制限
自治体によって、所得制限の有無や基準額が異なります。国の基準とは異なる場合が多いため、確認が必要です。
所得制限は、毎年見直しが行われる場合があります。また、「所得」とは、給与収入そのものではなく、給与所得控除などを差し引いた後の金額などを指します。
居住地・国籍について
原則として、日本の国籍を有し、日本国内に住所があることが要件となります。
ただし、永住者などの外国人の方も対象となる場合がありますので、詳細は申請窓口にご確認ください。
また、自治体独自の手当については、その自治体内に住民登録をしていることが必須要件となります。
その他
国の特別障害者手当、障害児福祉手当については、上記以外にも、対象者が障害者支援施設などに入所している場合や、病院に継続して3ヶ月以上入院している場合は、支給対象外となるという重要な要件があります。
これは、施設や病院で既に手厚い介護や支援を受けているため、という趣旨によるものです。
【障害者手当】いくらもらえる? – 金額と決定方法
障害者手当の支給額は、手当の種類や、障害の程度、所得状況などによって異なります。
具体的な支給額(国)
国の特別障害者手当、障害児福祉手当の月額は、法律で定められており、物価スライドなどにより改定されることがあります。
例として、令和6年度の支給額は以下の通りです(金額は変更される可能性がありますので、最新情報は必ずご確認ください)。
- 特別障害者手当: 月額 28,840円
- 障害児福祉手当: 月額 15,220円
これらの金額は、対象となる障害の程度(「著しく重度の障害」)を満たしていれば、所得制限に該当しない限り一律の金額です。
金額はどう決まる?
国の特別障害者手当や障害児福祉手当の場合、金額は法律で定められた定額です。対象となる障害の基準を満たすかどうかが重要であり、一度基準を満たせば、その基準に応じた定額が支給されます。
ただし、前述の所得制限によって、支給が停止される場合があります。
自治体独自の手当の場合は、自治体によって金額が大きく異なります。障害の等級に応じて金額が変わる場合や、一律の金額の場合など、その仕組みは様々です。自治体の条例によって定められています。
手当の金額は、年金や他の公的給付とは異なり、比較的少額の場合が多いです。これは、障害によって生じる「特別な負担」の一部を軽減することを主な目的としているためです。
【障害者手当】どうやって申請する? – 申請手続きの流れ
障害者手当を申請するには、いくつかのステップと書類が必要です。
手続きは、申請する手当の種類(国の手当か自治体の手当か)によって異なりますが、一般的には以下の流れになります。
申請に必要なもの
申請には、多くの書類が必要になります。漏れがないように、事前に確認リストを作成することをお勧めします。一般的な必要書類は以下の通りです。
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認定請求書:
申請窓口で入手します。ご自身の情報や障害の状況などを記入します。
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医師の診断書:
障害の状態を証明するために必須です。手当の種類ごとに定められた様式がありますので、必ず指定の様式を医師に記入してもらいます。診断書の内容が、手当の支給要件を満たすかどうかの重要な判断材料となります。
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戸籍謄本または戸籍抄本:
申請者本人や扶養義務者との続柄を確認するために必要です。
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世帯全員の住民票の写し:
世帯構成や居住地を確認するために必要です。
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所得に関する証明書類:
前年の所得状況を証明する書類です。市区町村が発行する所得証明書や課税証明書などが該当します。所得制限がある手当の場合に必要となります。
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障害者手帳の写し(お持ちの場合):
手帳を取得している場合は、その写しを提出します。
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その他:
印鑑、申請者名義の預金通帳の写し(手当の振込先)、マイナンバーを確認できる書類などが必要になることが多いです。手当の種類や自治体によっては、上記以外の書類が求められる場合もあります。
特に診断書は、手当の要件に合致するように作成してもらう必要があるため、申請窓口で様式を受け取る際に、医師への依頼方法や記載上の注意点などをよく確認しましょう。
申請窓口はどこ?
障害者手当の申請窓口は、お住まいの市区町村の担当課になります。
- 多くの場合は、役所の福祉担当課や障害福祉課などが窓口です。
- 町村にお住まいの場合は、役場の担当課にご確認ください。
申請に必要な書類を受け取ったり、手続きに関する詳細な説明を聞いたりするために、まずは窓口に相談に行くことをお勧めします。電話で問い合わせてから訪問するのも良いでしょう。
申請後の流れ
申請書類を窓口に提出した後、審査が行われます。
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書類の受付・確認:
提出した書類に不備がないか確認されます。
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審査:
提出された診断書やその他の書類に基づいて、手当の支給要件を満たすかどうか審査が行われます。必要に応じて、追加の書類提出や面談が求められることもあります。
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結果の通知:
審査結果は、書面で申請者に通知されます。「認定通知書」または「不支給決定通知書」などが郵送されます。
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手当の支給開始(認定の場合):
認定された場合、通知書に記載された時期から手当の支給が開始されます。
申請から結果通知までは、通常1ヶ月から数ヶ月かかることがあります。手当の種類や申請時期、自治体の事務処理状況によって期間は異なります。
【障害者手当】いつ、どこでもらえる? – 支給時期と受け取り方法
手当が認定された場合、定期的に指定の口座に振り込まれます。
いつ支給される?
国の特別障害者手当、障害児福祉手当は、原則として年4回、定められた月にまとめて支給されます。
支給月は、2月、5月、8月、11月で、それぞれの前月分までが支払われます。
例えば、5月には2月から4月分までの手当がまとめて支給される、といった形です。具体的な支給日は、それぞれの月の10日や15日など、自治体によって異なります。
自治体独自の手当については、支給時期や回数が異なる場合があります(毎月支給、年2回支給など)。
どうやって受け取る?
手当は、申請時に指定した金融機関の口座に振り込まれるのが一般的です。
原則として、申請者本人または手当の対象となる障害児を養育する方の名義の口座を指定します。
現金で受け取る制度はほとんどありません。
【障害者手当】受給中に注意することは? – 変更届出など
手当の受給が始まった後も、いくつかの注意点があります。
現況届について
多くの障害者手当では、受給資格があるかどうかを継続的に確認するため、「現況届」の提出が必要です。
これは、毎年特定の時期(例:7月や8月)に提出を求められ、所得状況や生活状況、障害の状態などに変化がないかを確認するために行われます。
現況届の提出を怠ると、手当の支給が一時的に差し止められたり、資格を失ったりする場合がありますので、提出案内を見逃さないように注意が必要です。
障害の状態や住所等が変わった場合
受給中に、障害の状態が重くなったり軽くなったりした場合、住所が変わった場合、家族構成や所得状況が大きく変わった場合などは、速やかに市区町村の窓口に届け出る必要があります。
届け出を怠ったまま手当を受給し続けると、後から返還を求められることもありますので、変更があった際は必ず窓口に相談しましょう。
【障害者手当】もし不支給になったら? – 不服申し立て
申請した手当が不支給になった場合、通知書に不支給となった理由が記載されています。その理由に納得できない場合や、提出した書類の内容が正しく評価されていないと思われる場合は、「不服申し立て」を行うことができます。
不服申し立ての手続き
不支給決定通知書を受け取ってから、通常は一定の期間内(例:60日以内)に、都道府県知事や市区町村長に対して不服申し立てを行います。
不服申し立ては書面で行う必要があり、なぜ不支給決定が不当だと思うのか、具体的な理由や根拠を記載します。
必要に応じて、改めて医師の意見書などを提出することもあります。
不服申し立ての審査には時間がかかりますが、審査の結果、当初の決定が覆り、支給が認められる可能性もあります。
手続きの詳細については、不支給決定通知書に記載されている窓口または、申請窓口に問い合わせて確認してください。
まとめ
障害者手当は、障害のある方やそのご家族の生活を支えるための重要な制度です。
しかし、手当の種類は複数あり、それぞれに対象者、要件、支給額、申請方法が細かく定められています。
ご自身の状況に合わせて適切な手当を探し、漏れなく申請を行うためには、まずはお住まいの市区町村の福祉担当窓口に相談することをお勧めします。
担当の方に状況を伝えれば、どの手当の対象になる可能性があるか、どのような手続きが必要か、必要な書類は何かなどを詳しく教えてもらえます。
制度を正しく理解し、活用することで、より安心して生活を送るための一助となるはずです。