障害者手帳の等級区分とその意味を理解する

【障害者手帳等級一覧表】という言葉が指すのは、正確には「障害者手帳に記載される障害の程度を示す等級区分」のことです。これは、障害の種類ごとに定められた基準に基づき、個々の障害の重さを判定し、手帳にその等級を明記するための「基準表」や「ガイドライン」を総称するものです。
この等級は、障害のある方が様々な福祉サービスや支援、優遇措置を受ける上で非常に重要な役割を果たします。しかし、一口に「障害者手帳」といってもいくつかの種類があり、それぞれで等級の区分や判定基準が異なります。

障害者手帳の種類と等級区分

日本には主に以下の3種類の障害者手帳があり、それぞれ等級のシステムが異なります。

  • 身体障害者手帳(身体の機能に永続的な障害がある方)
    身体障害者福祉法に基づき、身体の機能の障害の程度によって等級が定められます。
  • 療育手帳(知的障害のある方)
    知的障害者福祉法に基づき、知的発達の遅れや日常生活能力の程度によって判定されます。等級区分は自治体によって名称や基準が異なる場合があります。
  • 精神障害者保健福祉手帳(精神疾患のある方)
    精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に基づき、精神疾患による日常生活や社会生活への制約の程度によって等級が定められます。

これらの手帳に記載される等級が、どのような基準で決まり、どのような意味を持つのか、種類別に詳しく見ていきましょう。

身体障害者手帳の等級区分と判定基準

身体障害者手帳の等級は、最も重い障害が1級、以下2級、3級、4級、5級、6級と続き、原則として最も軽い障害が7級まであります。ただし、7級の障害単独では手帳の交付対象とならず、7級の障害が2つ以上ある場合や、他の級の障害と重複している場合に手帳の交付対象となることがあります。
この等級は、視覚障害、聴覚・平衡機能障害、音声・言語・そしゃく機能障害、肢体不自由、内部障害(心臓、腎臓、呼吸器、膀胱・直腸、小腸、免疫機能、肝臓)といった障害の種類ごとに、細かく基準が定められています。

身体障害の等級ごとの一般的な目安

具体的な判定基準は国の定める詳細なガイドラインに則って行われますが、等級ごとの一般的な目安は以下のようになります。

  • 1級(最重度)
    日常生活がほぼ不可能、常に特別な医療や介護が必要な状態。複数の重度障害が重複している場合もこの等級になることがあります。
    (例)両眼の失明、両上下肢の機能全廃、心臓や腎臓機能の極めて著しい障害により生命維持が困難な状態 など
  • 2級
    日常生活の範囲が著しく制限され、常時またはそれに準ずる程度の介護や援助が必要な状態。
    (例)両眼の高度な視力・視野障害、両下肢の機能全廃、重度の内部機能障害により自己管理が極めて困難な状態 など
  • 3級
    日常生活や社会生活の一部に著しい制限があり、ある程度の援助が必要な状態。
    (例)片眼の失明ともう片眼の高度視力障害、一肢の機能全廃、中等度の内部機能障害により特定の活動が著しく制限される状態 など
  • 4級
    日常生活や社会生活におけるある程度の制限があり、部分的な援助が必要な状態。
    (例)高度な聴覚障害(補聴器を使用しても会話が困難)、指の一部や関節の大きな機能障害、軽度の内部機能障害により定期的な管理や配慮が必要な状態 など
  • 5級
    身体の機能に一定の制限があり、状況に応じた配慮や援助が必要な状態。
    (例)中等度の肢体不自由(例えば、片足の機能障害により長距離歩行が困難)、人工肛門の造設 など
  • 6級
    身体の機能に一部制限がある状態。就労や社会参加において配慮が必要となる場合がある。
    (例)軽度の肢体不自由(例えば、手指の一部切断)、片耳の高度難聴 など

これらの基準は、医師による診断書や検査結果、日常生活の状況などを総合的に判断して決定されます。障害の種類によって、さらに細分化された基準が適用されます。

内部障害における機能の判定

内部障害(心臓、腎臓、呼吸器など)の等級判定は、臓器の機能状態を示す数値(例:心臓機能のNYHA分類、腎臓機能のGFR値など)や、日常生活での活動能力、医療的な管理の必要性などを総合的に評価して行われます。例えば、心臓機能障害の1級は「自己の身辺の特定の行為を遂行するにも極めて困難なもの」など、日常生活の制約の程度が重視されます。

身体障害者手帳の申請は、市区町村の福祉窓口を通じて行い、都道府県または政令指定都市の審査を経て交付されます。

療育手帳の判定区分と基準

療育手帳は、知的障害のある方が対象となる手帳です。身体障害者手帳や精神障害者保健福祉手帳とは異なり、国が定めた一律の等級区分ではなく、各都道府県や政令指定都市が独自の判定基準と名称を定めている場合がほとんどです。
そのため、「〇級」という数字ではなく、「A」「B」や「重度」「中度」「軽度」といった区分が用いられることが多いです。地域によっては、より細かくA1、A2、B1、B2といった区分を設けている場合もあります。

療育手帳の一般的な判定区分

全国共通ではありませんが、多くの自治体で用いられる代表的な区分は以下の通りです。

  • A(重度)
    重度の知的障害があり、日常生活において常時または頻繁に援助を必要とする状態。知能指数(IQ)や社会適応能力の評価に基づいて判定されます。
  • B(中軽度)
    中度または軽度の知的障害があり、日常生活や社会生活において一定の援助や配慮があれば自立した生活や社会参加が可能となる状態。地域によっては、さらに「B1(中度)」と「B2(軽度)」に分けられることがあります。

判定は主に18歳未満の場合は児童相談所、18歳以上の場合は知的障害者更生相談所で行われます。知能検査(IQテスト)、社会生活能力検査、医師の診断、生育歴、現在の生活状況などを総合的に評価して区分が決定されます。一度取得した後も、定期的な再判定が必要となる場合があります。

療育手帳の等級区分は、自治体ごとに提供される福祉サービスの種類や内容に影響します。

精神障害者保健福祉手帳の等級区分と判定基準

精神障害者保健福祉手帳は、精神疾患(てんかん、発達障害、高次脳機能障害を含む)により、長期にわたり日常生活または社会生活への制約がある方が対象です。等級は、障害の重い方から順に1級、2級、3級の3段階に区分されます。

精神障害者保健福祉手帳の等級ごとの目安

この手帳の等級判定は、精神疾患の診断名だけでなく、病状の程度や、それによって日常生活や社会生活にどのような制約が生じているか(能力障害の状態)を重視して行われます。

  • 1級(重度)
    精神疾患により、日常生活が著しい制限を受けるか、または日常生活を営むことが不可能に近い状態。例えば、適切な食事の準備や清潔の保持などが自発的にできず、常時援助が必要な状態。
  • 2級(中度)
    精神疾患により、日常生活が著しい制限を受ける状態。例えば、援助があればなんとか日常生活を送れるが、一人暮らしは困難で、就労も難しいなど、日常生活や社会生活を送る上でかなりの制約がある状態。
  • 3級(軽度)
    精神疾患により、日常生活または社会生活に制限を受ける状態。例えば、病状が安定せず、就労に困難が伴う、対人関係で支障があるなど、一定の援助や配慮が必要な状態。

判定は、医師の診断書に基づき、精神疾患による能力障害の状態を評価するガイドライン(精神障害者向け)に沿って行われます。申請は市区町村の福祉窓口を通じて行い、都道府県または政令指定都市の精神保健福祉センターなどで審査・判定が行われ、交付されます。原則として有効期限は2年間であり、継続して利用するには更新手続きが必要です。

障害者手帳の等級が影響すること(受けられる支援)

障害者手帳の等級は、障害のある方が利用できる様々な福祉サービスや公的支援、優遇措置の内容に直接的に影響します。手帳の種類と等級によって、受けられる支援の内容や範囲が異なります。

等級によって具体的にどのような支援が受けられるかは、お住まいの自治体や障害の種類によって詳細が異なりますが、一般的には以下のようなものが挙げられます。

  • 税制上の優遇措置
    所得税や住民税の障害者控除、相続税や贈与税の軽減などがあります。等級が重いほど控除額が大きくなる場合があります。(例:所得税・住民税の特別障害者控除は重度障害が対象)
  • 公共料金等の割引
    NHK受信料の減免、水道料金・下水道料金の減免などがあります。
  • 交通機関の割引
    鉄道、バス、タクシー、国内航空運賃などの割引があります。割引率は手帳の種類や等級、介助者の有無によって異なる場合があります。(例:JR運賃の割引は、身体障害者手帳・療育手帳の一種(重度)所持者は本人と介助者、二種(軽度)所持者は本人のみが対象となる場合が多い)
  • 医療費の助成
    自立支援医療(精神通院医療など)や、自治体独自の医療費助成制度を利用できる場合があります。
  • 福祉サービスの利用
    居宅介護(ホームヘルプ)、重度訪問介護、行動援護、短期入所(ショートステイ)、日中一時支援などの障害福祉サービスを利用する際に、障害支援区分(別途認定が必要)や手帳の等級がサービスの内容や利用量に関わる場合があります。
  • 補装具・日常生活用具の給付(購入費の助成)
    義肢、装具、車椅子、歩行器、補聴器などの補装具や、特殊寝台、入浴補助用具などの日常生活用具について、等級や障害の種類に応じて給付または購入費の助成を受けられます。

  • 公共施設等の利用割引
    美術館、博物館、公園、プールなどの入場料が減免される場合があります。
  • 駐車禁止規制の適用除外
    一部の重度障害者の方を対象に、駐車禁止場所に駐車できる標章の交付を受けられる場合があります。
  • 雇用に関する支援
    ハローワーク等での障害者専門の職業相談や紹介、障害者雇用枠での就労、障害者就業・生活支援センターの利用など、雇用に関する様々な支援があります。

これらの支援は、手帳を取得すれば自動的に全て受けられるわけではなく、それぞれのサービスや制度ごとに申請手続きが必要です。また、利用できるサービスの内容や自己負担の割合は、手帳の等級だけでなく、世帯の所得状況なども考慮されるのが一般的です。

重要なのは、手帳の等級はあくまで行政上の区分であり、その等級だけで個人の能力や可能性の全てが決まるわけではないということです。等級は、必要な支援の種類や度合いを行政が判断するための一つの目安として機能します。

等級判定のプロセスと相談先

障害者手帳の等級判定は、申請書類(診断書など)に基づき、専門的な知識を持つ医師や審査員で構成される判定医会や更生相談所、精神保健福祉センターなどの専門機関によって行われます。
申請者は、指定された医師に診断書を作成してもらい、その他の必要書類とともに、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口に提出します。提出された書類は、都道府県や政令指定都市の審査機関に送付され、等級判定が行われた後、手帳が交付されるという流れになります。

等級判定の結果に疑問や不服がある場合は、都道府県知事に対して審査請求(不服申立て)を行うことも可能です。

障害の種類や現在の状況を踏まえ、どのような手帳の対象となりうるか、またおおよそどの程度の等級になる可能性があるかを知りたい場合は、まずは以下の窓口に相談することをお勧めします。

  • お住まいの市区町村の障害福祉担当課
  • 相談支援事業所
  • かかりつけの医師
  • 身体障害者更生相談所(身体障害)
  • 児童相談所(知的障害、主に18歳未満)
  • 知的障害者更生相談所(知的障害、主に18歳以上)
  • 精神保健福祉センター(精神障害)

これらの窓口では、手帳制度の詳細、申請手続きの方法、必要書類、指定医の情報、そして手帳取得後に利用できる可能性のある福祉サービスなどについて、具体的な情報提供やアドバイスを受けることができます。特に、療育手帳の基準は自治体によって異なるため、お住まいの地域の窓口で確認することが不可欠です。

障害者手帳の等級一覧表は、障害のある方が自らの状態に応じた適切な支援にアクセスするための出発点となる重要な情報です。ご自身の障害の程度や受けられる支援について正確に理解するために、ぜひこれらの情報を活用し、必要に応じて専門機関に相談してください。


障害者手帳等級一覧表

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