障害者手帳は、様々な福祉サービスや支援を受けるために必要な証明書です。しかし、その申請方法や必要な手続きについて、どのように進めれば良いか分からないという方も少なくありません。
この記事では、障害者手帳の申請に関して、多くの方が抱く疑問点である「どのような制度か」「誰が対象か」「申請するメリット」「申請方法」「必要な書類」「申請窓口」などに焦点を当て、具体的かつ詳細に解説します。

障害者手帳とは?(「どのような制度か」について)

障害者手帳とは、身体や精神に一定の障害があることを証明する公的な手帳です。この手帳を所持することで、様々な福祉サービスや経済的な支援を受けることができます。障害の種類や程度によって、以下の3つの手帳があります。

  • 身体障害者手帳:身体上の永続的な障害がある方に交付されます。視覚、聴覚、平衡機能、音声・言語機能・そしゃく機能、肢体不自由、心臓、腎臓、呼吸器、ぼうこう・直腸、小腸、肝臓、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能に永続する障害がある場合が対象です。障害の程度に応じて1級から7級までの等級があります(ただし、手帳の交付対象となるのは1級から6級までです)。
  • 療育手帳:知的障害がある方に交付されます。知的障害の程度によって、「A」(重度)、「B」(中度)など、自治体ごとに異なる区分が設けられています。この手帳の名称は、自治体によって「愛の手帳」「みどりの手帳」など異なる場合があります。
  • 精神障害者保健福祉手帳:精神疾患があり、長期にわたり日常生活または社会生活への制約がある方に交付されます。すべての精神疾患が対象となり、うつ病、統合失調症、てんかん、発達障害、認知症なども含まれます。障害の程度に応じて1級から3級までの等級があります。手帳の有効期間は通常2年で、更新手続きが必要です。

これらの手帳は、障害の状況に応じていずれか、または複数の手帳を取得することが可能です。

誰が対象となるのか?(「誰が対象か」について)

障害者手帳の対象となるのは、前述の通り、身体障害、知的障害、精神障害のいずれかに該当し、その程度が法令や自治体の基準に定められた基準に達している方です。

  • 身体障害者手帳:身体障害者福祉法に基づき、政令で定められた障害の種類のいずれかに該当し、その程度が等級表に照らして一定以上であると認定された方。
  • 療育手帳:知的障害者更生相談所または児童相談所において知的障害であると判定された方。判定基準や区分は自治体によって異なりますが、おおむね、児童期までの発達期に生じたいちじるしい知的機能の障害により、日常生活に継続的な支援が必要な方が対象となります。
  • 精神障害者保健福祉手帳:精神疾患を有しており、精神等の障害のため長期にわたり日常生活または社会生活への制約がある方。この「長期」とは、原則として申請日から遡って6ヶ月以上の期間、精神疾患により医療機関を受診していることを指します。診断書は、精神疾患の初診日から6ヶ月以上経過した日以降に作成されたものである必要があります。

どの手帳についても、単に病名がある、診断を受けたというだけでなく、その障害によってどの程度日常生活や社会生活に支障が出ているかという観点から判定が行われます。具体的な基準については、お住まいの自治体の窓口で確認することが最も確実です。

障害者手帳を取得するメリット(「なぜ申請するのか」について)

障害者手帳を取得することで、様々な支援やサービスを利用できるようになり、生活上の負担軽減や社会参加の促進につながります。主なメリットは以下の通りです。

交通機関の割引

  • 鉄道、バス、タクシー:運賃の割引が受けられる場合があります。割引率は手帳の種類、等級、付添いの有無などによって異なります。JR線や私鉄、各地域のバス会社などが対象です。
  • 航空運賃:国内線を中心に、障害者割引運賃が設定されている航空会社があります。
  • 有料道路:有料道路の通行料金の割引制度があります。これは主に身体障害者手帳または療育手帳の所持者が対象で、ETCを利用した割引などもあります。

税制上の優遇措置

  • 所得税・住民税の障害者控除:本人または扶養親族が障害者である場合、所得税や住民税から一定額の控除が受けられます。障害の程度によって控除額が異なります。
  • 相続税の障害者控除:障害者が相続人である場合、相続税の負担が軽減されることがあります。
  • 贈与税の非課税措置:特定の信託契約により、障害者の生活費などに充てるための贈与について、一定額まで非課税となる制度があります。

公共料金等の割引・優遇

  • NHK受信料の免除・割引:障害者手帳の有無や世帯の状況によって、NHKの受信料が免除または半額になる制度があります。
  • 携帯電話料金の割引:多くの携帯電話会社で、障害者手帳所持者向けの割引プランが提供されています。
  • 上下水道料金の減免:自治体によっては、障害者世帯を対象に上下水道料金の減免制度を設けている場合があります。
  • 駐車禁止除外指定車標章:歩行が困難な障害者が、駐車禁止区域に駐車できる許可証を取得できる場合があります。

医療費の助成

  • 自立支援医療制度:精神通院医療、更生医療、育成医療など、特定の医療費について自己負担額が軽減される制度があります。精神障害者保健福祉手帳と関連が深いです。
  • 心身障害者医療費助成制度:自治体独自の制度として、心身に障害がある方の医療費の一部または全部を助成する制度があります。手帳の種類や等級、年齢などによって対象が異なります。

福祉サービスの利用

  • 障害福祉サービス:居宅介護(ホームヘルプ)、重度訪問介護、行動援護、短期入所(ショートステイ)、日中活動サービス(生活介護、就労移行支援、就労継続支援など)といった様々な障害福祉サービスを利用するための根拠となります。これらのサービスは、障害支援区分の認定とサービス等利用計画の作成を経て利用開始となります。
  • 日常生活用具の給付・貸与:ベッドや特殊寝台、入浴補助用具、補聴器、義肢装具など、日常生活を支援するための用具の購入費用やレンタル費用の一部または全部が助成される場合があります。
  • 補装具費の支給:義手、義足、装具、車いす、歩行器、座位保持装置などの購入または修理費の一部が支給されます。

就労支援

  • 障害者雇用枠での就職:企業に義務付けられている障害者雇用促進法に基づく障害者雇用枠での就職活動が可能になります。
  • ハローワークの専門窓口:ハローワークには障害のある方のための専門窓口があり、きめ細やかな就職相談や支援を受けることができます。
  • 就労移行支援事業所、就労継続支援事業所等の利用:これらの事業所は、障害のある方が一般企業への就職を目指す場合や、雇用契約を結ばずに働く場を提供する場合など、就労に関する様々な支援を行います。

これらのメリットは、お住まいの自治体や手帳の種類・等級、サービス内容によって異なります。詳細については、必ず自治体の福祉担当窓口に確認してください。

障害者手帳の申請方法(「どうやって申請するのか」について)

障害者手帳の申請は、以下の手順で進めるのが一般的です。手帳の種類によって若干異なる場合がありますが、大まかな流れは共通しています。

  1. お住まいの市区町村の福祉担当窓口に相談する
    まず最初に行うべきは、お住まいの市区町村役場や市町村の福祉事務所にある障害福祉担当の窓口に相談することです。ここで、申請したい手帳の種類、現在の状況などを伝え、対象となるかどうかの概ねの確認や、申請に必要な書類について説明を受けます。必要な申請書類の用紙や、診断書の指定様式を入手できます。
  2. 医師の診断を受ける(診断書の作成依頼)
    手帳の種類に応じた指定医や専門医の診断を受け、障害の状態に関する診断書を作成してもらいます。診断書は、手帳申請のために定められた様式を使用する必要があります。

    • 身体障害者手帳:原則として、都道府県知事が指定した医師(身体障害者福祉法第15条指定医)に作成してもらう必要があります。
    • 療育手帳:児童相談所または知的障害者更生相談所で判定を受ける必要があります。
    • 精神障害者保健福祉手帳:精神保健指定医または精神科を標榜する医師に作成してもらいます。初診日から6ヶ月以上経過していることが条件です。

    診断書の作成には費用がかかります(医療機関によって異なります)。

  3. 申請書類を作成する
    窓口で入手した申請書に必要事項を記入します。氏名、住所、生年月日、障害の状況などを正確に記載します。
  4. 必要な書類を準備する
    申請書、診断書のほかに、申請に必要な書類を揃えます。具体的な必要書類は「申請に必要な書類」の項目で後述します。特に顔写真は規定のサイズや条件がありますので注意が必要です。
  5. 市区町村の福祉担当窓口に申請書類一式を提出する
    準備が整ったら、申請書類一式を窓口に提出します。郵送での受付を行っている場合もありますが、多くは窓口での対面提出となります。
  6. 審査・判定
    提出された書類に基づき、自治体や専門機関(更生相談所、児童相談所、精神保健福祉センターなど)で障害の等級や該当性の審査・判定が行われます。必要に応じて、追加書類の提出を求められたり、本人や家族への聞き取りが行われたりすることもあります。
  7. 結果通知・手帳の交付
    審査・判定が終わると、結果が申請者に通知されます。認定された場合は、障害者手帳が交付されます。残念ながら認定されなかった場合は、却下通知が送付されます。

申請に必要な書類(「申請に必要なもの」について)

障害者手帳の申請には、一般的に以下の書類が必要となります。手帳の種類や自治体によって異なる場合があるため、必ず事前に窓口で確認してください。

  • 障害者手帳申請書:自治体の窓口で入手できる所定の様式です。
  • 診断書:手帳の種類に応じた、自治体指定または認めている様式の診断書です。医師に記入してもらいます。

    【注意点】
    身体障害者手帳の場合、都道府県知事が指定した医師(15条指定医)に書いてもらう必要があります。誰でも良いわけではありません。
    精神障害者保健福祉手帳の場合、原則として精神科医に、初診日から6ヶ月以上経過した時点での病状について記載してもらう必要があります。

  • 顔写真:多くの場合、縦4cm×横3cm程度のサイズで、帽子をかぶっておらず、無背景で、直近〇ヶ月以内(例:1年以内)に撮影されたものが必要です。枚数も指定されている場合があります。
  • マイナンバー(個人番号)を確認できる書類:マイナンバーカード、通知カード、マイナンバーが記載された住民票の写しなど。
  • 申請者の身元を確認できる書類:マイナンバーカード(顔写真付きの場合)、運転免許証、パスポート、健康保険証など。
  • 印鑑:申請書に押印が必要な場合があります(最近は署名でも可能な場合が増えています)。

その他、場合によっては同意書や病歴申告書、年金証書(精神障害者保健福祉手帳の場合、精神障害を事由とする年金を受給している場合は診断書を省略できることがあります)などが必要となることがあります。事前に窓口で確認し、不足のないように準備しましょう。

どこで申請するのか?(「申請窓口」について)

障害者手帳の申請窓口は、原則として申請者の住民登録がある市区町村の障害福祉担当窓口です。

具体的には、市役所や区役所、町村役場などの以下の部署が担当していることが多いです。

  • 福祉課
  • 障害福祉課
  • 健康福祉課
  • 保健福祉課

部署の名称は自治体によって異なりますので、役場の代表電話にかけて「障害者手帳の申請をしたいのですが、担当課を教えてください」と尋ねるか、自治体の公式ウェブサイトで確認するのが確実です。

申請書類の提出だけでなく、事前の相談や申請書類の用紙の受け取りもこの窓口で行います。

申請にかかる費用はどのくらい?(「いくらかかるのか」について)

障害者手帳の申請自体に、申請手数料はかかりません。公的な手続きであり、無料で行うことができます。

しかし、申請には医師の診断書が必要であり、この診断書の作成費用は自己負担となります。診断書の費用は医療機関によって異なりますが、一般的には数千円から1万円程度かかることが多いようです。この費用は健康保険の適用外となります。

また、診断書以外の必要書類(住民票の写しなど)の取得に手数料がかかる場合や、申請に必要な顔写真の撮影費用なども発生する可能性があります。

したがって、申請にかかる主な費用は「診断書の作成費用」と考えて良いでしょう。正確な診断書作成費用については、診断書を作成してもらう医療機関に事前に確認することをおすすめします。

申請後の流れと手帳が届くまでの期間(「申請後どうなるのか」について)

申請書類を窓口に提出した後、以下のような流れで審査が進み、結果が通知されます。

  1. 書類受付・形式審査:提出された書類に不備がないか確認されます。不備があれば連絡があり、追加提出や訂正を求められる場合があります。
  2. 内容審査・判定:提出された診断書や申請書の内容に基づき、障害の程度や手帳の該当性について審査が行われます。
    • 身体障害者手帳:自治体によっては、専門の審査会などで判定が行われます。
    • 療育手帳:児童相談所または知的障害者更生相談所で判定面接などが行われます。
    • 精神障害者保健福祉手帳:提出された診断書などを精神科医などが審査します。
  3. 結果通知:審査結果が決定すると、申請者に郵送などで通知されます。
  4. 手帳の交付または却下:認定された場合は、通知書と併せて手帳の交付方法(郵送または窓口での受け取り)について案内があります。窓口での交付の場合、本人確認書類などが必要となることがあります。残念ながら却下となった場合は、その理由が通知されます。却下決定に不服がある場合は、審査請求を行うことも可能です。

申請から手帳が手元に届くまでの期間は、手帳の種類や自治体、申請時期の混雑状況などによって異なりますが、一般的には1ヶ月から3ヶ月程度かかることが多いようです。特に、診断書の内容確認や判定に時間がかかる場合、これより長くかかることもあります。

【期間についての留意点】
精神障害者保健福祉手帳は、更新手続きの場合も新規申請と同様に期間がかかります。有効期間満了日の3ヶ月前から申請可能な自治体が多いので、早めに手続きを始めることが推奨されます。

その他の留意点

障害者手帳に関して、その他知っておくべき点をいくつか挙げます。

  • 手帳の有効期間と更新:精神障害者保健福祉手帳には有効期間(通常2年)があり、継続して利用するためには更新手続きが必要です。更新時期が近づくと、自治体から通知が送られてくることが多いです。身体障害者手帳と療育手帳には原則として有効期間はありませんが、障害程度の変化が見込まれる場合などに再認定が求められることがあります。
  • 障害程度の変更:障害の状態が変化し、手帳の等級の見直しを希望する場合、再認定の申請を行うことができます。
  • 紛失・破損:手帳を紛失したり破損したりした場合は、再交付の申請が可能です。申請窓口で手続きできます。
  • 住所・氏名の変更:引っ越しなどで住所が変わった場合や、結婚などで氏名が変わった場合は、記載事項変更の手続きが必要です。
  • 事前の相談の重要性:申請手続きは複雑に感じられることもあります。ご自身の状況が手帳交付の対象となるか、どのような書類が必要かなど、申請を始める前に必ずお住まいの市区町村の障害福祉担当窓口に相談することをお勧めします。必要に応じて、医師や相談支援専門員などの専門家と連携しながら進めることも重要です。

まとめ

障害者手帳の申請は、ご自身の障害の状態を公的に認められ、様々な支援やサービスにつながる大切なステップです。制度の概要、対象となる方、そして手帳を取得することで得られるメリットを理解し、適切な申請手続きを進めることが重要です。

申請方法や必要書類は手帳の種類や自治体によって異なるため、まずは地域の障害福祉担当窓口に相談することから始めましょう。時間はかかるかもしれませんが、計画的に準備を進めることで、スムーズな申請につながります。


障害者手帳申請

By admin

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