【障害支援区分】とは?なぜ必要なのか

【障害支援区分】とは、障害のある方が、ご自身の状況に応じて適切な福祉サービスを利用するために必要な「ものさし」です。
これは単に「あなたは障害がある」という認定ではなく、「あなたの日常生活上の困りごとに対し、どの程度の支援が必要か」を具体的に判断し、必要なサービスの量や種類を決定するための制度です。

この区分があることで、市区町村やサービス提供事業者は、個々の方に必要なサービスを把握し、適切な支援計画(サービス等利用計画)を立てることができます。つまり、あなたが必要とする支援を、公的なサービスとして適切に受け取るために不可欠な判定と言えます。

【障害支援区分】はどのように決まる?判定プロセス

障害支援区分は、申請すればすぐに決まるものではなく、あなたの心身の状況や生活環境を詳しく調べた上で、公平な判定が行われます。そのプロセスは以下のようになっています。

判定のおおまかな流れ

  1. 申請
    まず、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口に、障害福祉サービスの利用申請を行います。この申請をもって、障害支援区分の判定プロセスが開始されます。申請時には、医師の意見書などが必要になる場合があります。
  2. 認定調査
    市区町村の職員や、委託を受けた相談支援事業所の相談支援専門員などが、あなたの自宅や入院・入所している場所を訪問し、面接による聞き取り調査を行います。この調査では、「認定調査票」に基づき、あなたの日常的な動作能力(食事、排泄、入浴、移動など)や、認知機能、精神・行動面での状況、医療的なケアの必要性など、多岐にわたる約80項目の質問に答える形で進められます。単に質問に答えるだけでなく、実際の生活状況を観察することもあります。
  3. 一次判定
    認定調査の結果と、事前に提出された医師の意見書の情報の一部を基に、コンピューターによって機械的に判定が行われます。この段階で、「一次判定スコア」が算出され、区分1~6または非該当のいずれかに振り分けられます。これはあくまで一次的な判定です。
  4. 二次判定(市町村審査会での審査)
    一次判定の結果と、認定調査の際に調査員が記入した特記事項(調査票だけでは伝わらない、より詳細な状況や生活環境の情報)、そして医師の意見書全体の内容を踏まえ、医療、保健、福祉に関する専門家(医師、保健師、福祉施設の職員経験者、学識経験者など)で構成される「市町村審査会」が開催されます。この審査会で、個々の状況を総合的に判断し、最終的な障害支援区分(区分1~6または非該当)が決定されます。
  5. 結果通知
    市町村審査会で決定された障害支援区分が記載された「障害支援区分認定通知書」が、申請者(またはその代理人)に郵送されます。この通知書には、認定された区分と有効期間が明記されています。

判定の基準となる「認定調査項目」

認定調査票の項目は、支援の必要度を測るために具体的に以下のような内容で構成されています。

  • ① 日常生活に係るもの:
    食事、排泄、入浴、着脱衣、移動、視力、聴力など、基本的な日常生活動作に関する項目。
  • ② 日常生活能力に係るもの:
    コミュニケーション能力、段取り力、金銭管理、服薬管理、買い物、調理、危険予測・回避など、より複雑な日常生活や社会生活を送る上での能力に関する項目。
  • ③ 行動障害に係るもの:
    異食、徘徊、多動、不潔行為、物を壊す、攻撃行為、自傷行為、睡眠の乱れなど、特定の行動障害に関する項目。
  • ④ 精神障害に係るもの:
    感情不安定、幻覚・妄想、意欲・思考の障害、拒絶、引っ込み思案、対人関係、不安・焦燥など、精神的な状態に関する項目。
  • ⑤ その他の状況に係るもの:
    医療的な処置(経管栄養、吸引、点滴、酸素療法、人工呼吸器、人工透析、ストマ、ペースメーカー、褥瘡、導尿など)の必要性、特別な医療に関する項目。

これらの項目に対するあなたの状況が、調査員によって細かく確認・記録され、それが一次判定、そして二次判定における重要な判断材料となります。

【障害支援区分】の「区分」について:等級の詳細

障害支援区分は、支援の必要度が高い順に区分6、区分5、区分4、区分3、区分2、区分1の6段階と、支援の必要性が認められない非該当に分けられます。

数字が大きいほど、日常生活において必要とされる支援の量が「高い」と判定されたことを意味します。各区分の目安は以下の通りです。

各区分の目安(一般的な状態像)

  • 区分1:
    日常生活における基本的な動作は概ね可能ですが、一部の行為や判断において支援が必要な状態。例えば、身の回りのことは自分でできるが、複雑な手続きや社会的な場面で支援が必要な場合などが含まれます。
  • 区分2:
    日常生活に多少の困難があり、部分的な支援や見守りが必要な状態。排泄や入浴などで部分的な介助が必要、または日中の活動において指示や声かけが必要な場合など。
  • 区分3:
    日常生活の多くの場面で支援が必要であり、身体的介助や継続的な見守り、頻繁な声かけや指示が必要な状態。食事や排泄などで介助が必要な場合、行動面で頻繁な支援が必要な場合など。
  • 区分4:
    日常生活のほぼ全般にわたり、高度な支援が必要な状態。着脱衣や入浴、排泄など多くの場面で身体介助が必要な場合、または、重度の行動障害や精神症状があり、常時見守りや専門的な対応が必要な場合などが含まれます。複雑な状況判断や危険回避が困難な場合も多いです。
  • 区分5:
    日常生活において常に介護や支援が不可欠であり、自立的な生活が極めて困難な状態。重度の身体障害や知的障害、精神障害などにより、意思疎通や行動などに著しい困難があり、きめ細やかな支援が継続的に必要な場合。
  • 区分6:
    最重度の支援が必要な状態。寝たきりに近い状態であったり、重度の知的障害・精神障害と行動障害が重複しており、常時専門的な医療的ケアや集中的な支援が不可欠な場合など、最も高いレベルの支援が必要です。
  • 非該当:
    現在の心身の状態では、障害福祉サービスによる支援の必要性が認められないと判定された場合。

これらの区分は、あなたの「できること」「できないこと」を評価するのではなく、「どのような支援が、どのくらい必要か」という観点から判定されるものであるという点を理解しておくことが重要です。

【障害支援区分】がサービス利用とどう繋がる?どこで使われるか

【障害支援区分】は、あなたが障害者総合支援法に基づくさまざまな福祉サービスを利用するための扉を開く鍵と言えます。原則として、この区分に応じて、あなたが利用できるサービスの「種類」や「量(利用時間数や回数)」の上限が決まります。

具体的に、どのようなサービスで区分が影響するかというと、以下のようなサービスが挙げられます。

区分によって利用できるサービス(代表例)

  • 居宅介護(ホームヘルプ):
    自宅での身体介護(食事、排泄、入浴、着替えの介助など)や生活援助(掃除、洗濯、買い物、調理など)を利用できます。区分が高いほど、より長時間の身体介護や生活援助の利用が可能になります。
  • 重度訪問介護:
    重度の肢体不自由や重度の知的障害・精神障害があり、常に介護が必要な方に対し、長時間にわたり居宅での介護を提供します。区分3以上などが対象となる場合が多く、区分が高いほど利用できる時間数が手厚くなります。
  • 同行援護:
    視覚障害により移動に著しい困難を有する方に、外出時に同行して移動の支援や、必要な情報の提供、代筆・代読などを行います。一定の区分以上が対象となります。
  • 行動援護:
    知的障害や精神障害により行動上著しい困難を有する方に、外出時の危険回避や、行動中の不穏を鎮めるための支援などを行います。一定の区分以上が対象となります。
  • 短期入所(ショートステイ):
    自宅で介護している家族などの負担軽減のため、一時的に施設に入所して、入浴や排泄、食事などの介護を受けられます。区分によって利用できる日数に上限が設定される場合があります。
  • 生活介護:
    常に介護が必要な方に、日中、施設で入浴、排泄、食事の介護や、創作的活動または生産活動の機会を提供します。主に区分3以上などが対象となります。
  • 自立訓練(機能訓練・生活訓練):
    地域での自立した生活を目指す方に、身体機能や生活能力向上のための訓練を行います。区分の条件がある場合があります。
  • 就労移行支援・就労継続支援(A型・B型):
    一般企業への就職を目指す方や、一般企業での就労が難しい方に、働く場や訓練を提供します。これらのサービスも、利用にあたって区分の条件が設定されている場合があります(特に就労継続支援A型など)。

このように、障害支援区分は、あなたがどのようなサービスを、どれくらいの「量」利用できるかというサービス利用計画の根幹となる情報です。相談支援専門員は、あなたの障害支援区分と、あなたの生活の希望や課題、心身の状態を総合的に考慮し、あなたに最適なサービスの組み合わせを提案・調整していく役割を担います。

サービス利用の費用はどうなる?区分との関係

障害福祉サービスの利用にかかる費用は、原則としてサービス費用の総額の1割を自己負担として支払うことになります。しかし、この自己負担額には、世帯の所得に応じて上限月額(負担上限月額)が定められています。

つまり、障害支援区分そのものが、あなたが月に支払う自己負担額の「金額」を直接的に決定するわけではありません。区分が高いほど、より多くのサービス量を利用することになるため、サービス費用の総額は高くなりますが、実際にあなたが支払う自己負担額は、その区分ではなく、世帯の所得状況によって決まる負担上限月額を超えないことになっています。

負担上限月額は、主に以下の所得区分に応じて設定されています。

  • 生活保護受給世帯
  • 市町村民税非課税世帯(低所得)
  • 市町村民税課税世帯(一般1、一般2)

これらの区分に応じた月額上限額が定められており、たとえ利用したサービスの費用総額の1割がその上限額を超えても、支払いは上限額までとなります。

したがって、障害支援区分は「受けられるサービスの量」の上限に影響し、世帯の所得区分が「実際に支払う自己負担の上限額」に影響する、と理解することができます。

区分の有効期間と変更について

一度認定された障害支援区分には、有効期間が定められています。この有効期間は、あなたの心身の状態によって異なり、一般的には**最長3年間**ですが、状態が変わりやすい方(例:病状が進行・改善中の場合など)については、6ヶ月や1年などの短い期間が設定されることもあります。

有効期間が終了する前に、引き続きサービス利用が必要な場合は、更新の手続きを行う必要があります。更新申請は、新規申請と同様に市区町村の窓口で行い、再度認定調査や市町村審査会による判定を経て、新たな区分と有効期間が決定されます。

また、有効期間内であっても、病状の悪化や回復、事故などにより、現在の区分では支援の必要度が合わなくなったと感じるほど、心身の状態が大きく変化した場合は、いつでも区分の変更申請を行うことができます。変更申請の手続きも、新規申請や更新申請と基本的に同じ流れになります。状態の変化に応じて適切な支援を受けるためには、必要に応じて変更申請を検討することが大切です。

判定結果に納得できない場合は?

市区町村から通知された障害支援区分や、非該当という判定結果について、内容に不服がある場合や、調査や審査が適切に行われなかったと思われる場合は、行政に対する不服申し立て(審査請求)を行うことができます。

不服申し立ては、判定結果の通知を受け取った日の翌日から原則として3ヶ月以内に、都道府県に設置されている「障害者介護給付費等不服審査会」に対して書面で行います。

不服申し立てを行う際は、なぜその判定が不当であると考えるのか、具体的な理由や、それを裏付ける証拠(例えば、調査時に十分に伝えきれなかった本人の状態を詳細に説明した書類、現状を把握している医師の新たな意見書など)を整理して提出することが非常に重要です。

審査会は、提出された書類や、必要に応じて調査員や市区町村からの聞き取りなども行った上で、改めて判定の適否を審査します。不服が認められれば、市区町村に対して再調査や再判定を行うよう指示が出されます。

ただし、不服申し立ての手続きには時間がかかる場合があり、申し立てを行っている間も、通知された区分に基づいたサービス利用は可能です。もしサービス利用自体が切迫している場合は、並行してサービス利用の手続きを進めることも考慮に入れると良いでしょう。

【障害支援区分】は、障害のある方が、地域で安心してその人らしい生活を送るために、どのような「支援」が、どのくらい必要なのかを公的に明確にするための重要な制度です。
この区分を正しく理解し、必要に応じて見直しを行いながら、ご自身の状況に合った適切なサービスに繋げることが、自立した質の高い生活を送る上で非常に大切になります。
申請手続きや判定内容について不安な点、疑問点がある場合は、一人で抱え込まずに、お住まいの市区町村の障害福祉窓口や、相談支援事業所に遠慮なく相談してみましょう。専門家からのアドバイスやサポートを受けることで、よりスムーズに適切な支援へ繋がることができます。

By admin

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