【障害区分認定】は、障害のある方が、日常生活や社会生活を送る上で、どの程度の支援が必要かを客観的に判断するための日本の公的な制度です。この認定を受けることで、障害者総合支援法に基づく様々な福祉サービスを利用できるようになります。単に障害の有無を証明するものではなく、「必要な支援の度合い」を測定する点が特徴です。
【障害区分認定】とは具体的に何ですか?
【障害区分認定】は、正式には「障害支援区分」と呼ばれ、障害者総合支援法に基づき、障害のある方の個々の心身の状態や、それによって生じる生活上の困難の程度に応じ、必要な支援の度合いを示す6段階(区分1~区分6)の区分を認定するものです。
この区分は、医学的な観点だけでなく、日常生活、社会生活、介護を受けているか、行動上の困難があるかなど、多角的な視点から判断されます。認定調査員による聞き取り調査の結果や医師の意見書などを基に総合的に判定されます。
最も支援が必要とされる状態が「区分6」、比較的支援の必要性が低い状態が「区分1」となり、支援の必要性が認められない場合は「非該当」となります。
なぜ【障害区分認定】が必要なのですか?
【障害区分認定】が必要な最大の理由は、障害者総合支援法に基づく多様な福祉サービスを利用するための「 eligibility(利用資格)とサービス量の決定根拠」となるからです。
例えば、自宅での生活を支援する「居宅介護(ホームヘルプ)」や、日中活動を支援する「生活介護」、短期入所できる「短期入所(ショートステイ)」などのサービスは、この区分に応じて利用できるサービスの種類や時間、日数が決まります。
認定を受けていなければ、原則としてこれらのサービスを利用することはできません。つまり、必要な支援を公的に受けるための「入り口」となる重要な手続きなのです。
【障害区分認定】の区分はどのように分かれていますか?
障害支援区分は、支援の必要度に応じて以下の6段階と、支援の必要がないとされる非該当に分けられます。
- 区分1: 日常生活における支援の必要性が比較的低い状態。
- 区分2: 日常生活における支援の必要性が、区分1よりも高い状態。
- 区分3: 日常生活における支援の必要性が、区分2よりも高い状態。
- 区分4: 日常生活や行動面で、より専門的・集中的な支援を必要とする状態。
- 区分5: 日常生活全般にわたり、多くの支援を必要とする状態。
- 区分6: 日常生活全般にわたり、最も手厚い支援を必要とする状態。
- 非該当: 障害による支援の必要性が認められない状態。
この区分は、単に特定の行動ができる・できないだけでなく、認定調査の80項目にわたる調査や医師の意見書などを総合的に評価して決定されます。
【障害区分認定】はどこで申請できますか?
【障害区分認定】の申請窓口は、お住まいの市町村の役場(区役所、市役所、町村役場など)の障害福祉担当課です。
申請を希望する本人またはその家族などが、該当窓口に必要書類を提出することから手続きが始まります。
申請方法や必要な書類については、事前に電話や窓口で確認することをおすすめします。
【障害区分認定】の申請に費用はかかりますか?
【障害区分認定】の申請自体にかかる手数料は無料です。
ただし、申請時に提出が必要となる「医師の意見書」を作成してもらうための費用(診察料や文書料)は、原則として自己負担となります。この費用は医療機関によって異なる場合がありますので、事前に確認が必要です。
【障害区分認定】の申請はどのように行いますか?(具体的な流れ)
【障害区分認定】の申請から認定までの一般的な流れは以下の通りです。
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市町村の窓口に申請書類を提出:
申請書(市町村の窓口にあります)、医師の意見書、個人番号(マイナンバー)確認書類などを準備し、お住まいの市町村の障害福祉担当窓口に提出します。医師の意見書は、かかりつけ医などに作成を依頼します。 -
認定調査員による訪問調査:
市町村から委託された認定調査員が自宅などを訪問し、本人や家族などから心身の状態や生活状況について聞き取り調査を行います。
調査項目は、①感覚・運動、②認知、③行動・情緒、④生活、⑤介護の状況など、多岐にわたる80項目について細かく確認されます。本人の状況をよく知っている家族などの同席が望ましいです。 -
一次判定(コンピューターによる判定):
訪問調査の結果と医師の意見書の情報に基づき、国の定めた基準に従ってコンピューターによる客観的な一次判定が行われます。これはあくまで機械的な判定です。 -
二次判定(市町村審査会による判定):
一次判定の結果、認定調査員の特記事項、医師の意見書の内容などを踏まえ、市町村に設置された医師や保健師、福祉の専門家などで構成される「市町村審査会」が総合的に判断し、最終的な障害支援区分を決定します。
ここでは、コンピューター判定では捉えきれない個々の状況や、専門的な見地からの評価が加えられます。 -
認定通知書の送付:
市町村審査会での判定結果に基づいて、障害支援区分が記載された「認定通知書」が本人に郵送されます。非該当と判定された場合も通知されます。
【障害区分認定】の申請から認定まで、どのくらいの期間がかかりますか?
【障害区分認定】の申請から認定通知が届くまでの期間は、市町村によって異なりますが、一般的には1ヶ月から2ヶ月程度かかることが多いです。
ただし、申請書類に不備があった場合や、訪問調査の日程調整に時間がかかる場合、審査会の開催スケジュールによっては、さらに時間を要することもあります。
【障害区分認定】によってどのようなサービスが利用できますか?
【障害区分認定】によって利用できるサービスは、障害者総合支援法に基づく「障害福祉サービス」と「地域生活支援事業」などがあります。障害支援区分に応じて、利用できるサービスの種類や量が決まります。
代表的な障害福祉サービスには以下のようなものがあります。
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居宅介護(ホームヘルプ):
自宅での入浴、排せつ、食事の介助や、調理、洗濯、掃除などの家事援助、通院介助など。 -
重度訪問介護:
重度の肢体不自由者等で常時介護が必要な方への支援(生活全般にわたる支援や外出時の移動支援など)。 -
生活介護:
常に介護が必要な方に対し、日中、入浴、排せつ、食事の介助や創作的活動、生産活動の機会を提供。 -
短期入所(ショートステイ):
自宅で介護する家族が病気の場合などに、障害のある方が短期間、施設に入所して生活介護などを受けるサービス。 -
共同生活援助(グループホーム):
主に夜間や休日、共同生活を営む住居で、相談や日常生活上の援助を受けながら生活するサービス。 -
就労移行支援/就労継続支援(A型・B型):
一般企業への就労を目指す方、または一般企業での就労が困難な方に、働く場や訓練を提供するサービス。
これらのサービス以外にも、利用できるサービスは多岐にわたります。どのサービスをどの程度利用できるかは、認定された障害支援区分と、個別の「サービス等利用計画」に基づいて決定されます。
【障害区分認定】には有効期限がありますか?更新は必要ですか?
はい、【障害区分認定】には有効期間があります。一度認定を受けると永続するものではありません。
有効期間は、原則として認定を受けてから1年から3年の間で、個々の状態に応じて市町村が定めます。有効期間の満了日が近づくと、市町村から更新手続きに関する通知が送られてきますので、忘れずに更新の申請を行う必要があります。
更新申請の際も、新規申請と同様に、改めて認定調査や審査が行われます。状態に変化があった場合は、区分が変わる可能性もあります。
【障害区分認定】の結果に納得できない場合、どうすればいいですか?
【障害区分認定】の結果(障害支援区分や非該当の判定など)に不服がある場合は、正式な手続きとして「審査請求」を行うことができます。
審査請求は、認定通知書を受け取った日の翌日から原則として3ヶ月以内に、お住まいの都道府県に設置されている「障害者介護給付費等不服審査会」に対して行います。
審査請求を行う際は、不服とする理由などを記載した書類を提出する必要があります。審査会での審理を経て、判定の妥当性が改めて判断されます。
【障害区分認定】は「障害者手帳」とは違うものですか?
はい、【障害区分認定】と「障害者手帳(身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳)」は、全く異なる制度です。
障害者手帳:
障害そのものの「存在」と「程度」を証明するもの。
目的:税金の控除、公共交通機関の割引、各種施設の割引など、主に「手帳の提示によるサービスや割引」を受けるため。
根拠法:身体障害者福祉法、知的障害者福祉法(療育手帳は自治体独自)、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律。
判定基準:主に医学的診断や基準に基づき、級(等級)が判定される。【障害区分認定】(障害支援区分):
日常生活における「支援の必要性の度合い」を判定するもの。
目的:障害者総合支援法に基づく「福祉サービス」を利用するための資格とサービス量を決めるため。
根拠法:障害者総合支援法。
判定基準:認定調査(生活状況の詳細な聞き取り)と医師の意見書に基づき、支援区分(区分1~6)が判定される。
障害者手帳を持っていても【障害区分認定】を受けていない方や、逆に【障害区分認定】を受けていても障害者手帳を持っていない方もいます。
障害福祉サービスを利用するためには、原則として【障害区分認定】が必要ですが、手帳は各種割引などに広く利用できます。多くのサービス利用者の方は、両方の制度を利用しています。
【障害区分認定】は、障害のある方が地域で安心して生活し、必要な支援を受けながら自立した生活を送るための重要な手続きです。ご本人やご家族だけでなく、支援に関わる関係者も、この制度を正しく理解しておくことが大切です。不明な点があれば、遠慮なくお住まいの市町村の障害福祉担当窓口に相談してみましょう。