【長野地方裁判所】とは? 何をするところ?
長野地方裁判所は、日本の裁判所制度において、長野県を管轄区域とする地方裁判所です。民事事件、刑事事件、行政事件など、様々な種類の第一審の裁判を担当するほか、簡易裁判所や家庭裁判所の判断に対する控訴・抗告審の一部も扱います。県内に支部や出張所(現在は支部のみ)を持ち、地域に根差した司法サービスを提供しています。
特定の紛争の解決、犯罪に対する適切な刑罰の決定、個人の権利利益の保護、行政行為の適法性の審査など、法の支配を実現するための重要な役割を担っています。
長野地方裁判所の主な管轄事件の種類
長野地方裁判所本庁および各支部では、主に以下のような事件を取り扱っています。
- 民事事件:貸金返還請求、損害賠償請求、不動産の明渡し請求、建築紛争、交通事故に関する訴訟など、個人や法人間の財産や権利義務に関する争い。訴額が140万円を超えるものが中心となります(140万円以下の場合は簡易裁判所の管轄になることが多いです)。
- 刑事事件:強盗、殺人、放火といった重大犯罪に関する第一審の公判。また、簡易裁判所が担当した事件に対する控訴審も取り扱います。裁判員裁判の対象となる事件もここで審理されます。
- 行政事件:国や地方公共団体の処分(課税処分、許認可の取消しなど)の取消しや無効確認を求める訴訟。
- 労働審判事件:個別の労働者と事業主との間の労働関係に関する紛争について、裁判官と労働審判員が審理を行い、調停又は審判を行う手続き。
- 借地非訟事件:借地権に関する様々な問題(たとえば、借地条件の変更や増改築許可など)について、訴訟ではなく非訟事件として処理される手続き。
- その他:破産、個人再生、民事再生といった倒産事件、民事執行(強制執行、担保権実行など)、民事保全(仮差押え、仮処分など)といった手続きも扱います。
長野地方裁判所本庁は【どこ】にある? アクセス方法は?
長野地方裁判所の本庁は、長野市の中心部に位置しています。
所在地:〒380-8540 長野県長野市鶴賀緑町1613
電話番号:026-233-4926(代表)
アクセス方法:
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JR・しなの鉄道 長野駅 から:
- 徒歩:長野駅善光寺口(西口)から北東方向へ徒歩約15分~20分程度です。駅から市役所方面へ進み、国道19号線を渡ってさらに進むと裁判所合同庁舎が見えます。
- バス:長野駅善光寺口バス乗り場から、長野市役所方面行きのバスに乗車し、「市役所前」または「緑町」バス停で下車するのが便利です。バス停からは徒歩数分です。
利用可能なバス路線は複数ありますので、目的地のバス停を確認してください。
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お車でお越しの場合:
- 長野地方裁判所には、一般の来庁者用の駐車場は限られています。可能な限り公共交通機関を利用することをお勧めします。
- やむを得ず車で来庁する場合は、近隣の有料駐車場を利用することになります。事前に周辺の駐車場情報を確認しておくと良いでしょう。
裁判所合同庁舎内には、長野地方裁判所のほか、長野家庭裁判所、長野簡易裁判所、長野地方検察庁などが入居しています。目的の機関がある階や窓口を事前に確認しておくとスムーズです。
長野県内の【どこ】に支部や出張所がある?
長野地方裁判所は、本庁のほかに県内各地に支部を設置しています。これにより、県内の広い範囲で司法サービスを提供しています。
- 長野地方裁判所 上田支部:〒386-0023 長野県上田市中央西2丁目4-22
- 長野地方裁判所 諏訪支部:〒392-8621 長野県諏訪市高島1丁目24-8
- 長野地方裁判所 飯田支部:〒395-0046 長野県飯田市高羽町6丁目2-2
- 長野地方裁判所 松本支部:〒390-8509 長野県松本市丸の内7-28
- 長野地方裁判所 佐久支部:〒385-0052 長野県佐久市原580-1
各支部は、その管轄区域内における地方裁判所としての事件(民事、刑事、行政など)を取り扱います。ただし、事件の種類によっては、本庁または特定の支部でしか扱わない場合もあります(例:大規模な倒産事件は本庁で扱うことが多いなど)。
管轄区域や取り扱い事件の詳細については、各支部の情報や裁判所の公式サイトで確認するか、直接問い合わせることをお勧めします。
長野地方裁判所を【利用する際の費用】はどれくらいかかる?
長野地方裁判所を利用する際に発生する費用は、手続きの種類によって大きく異なります。主な費用としては、申立てや訴えの提起にかかる手数料、書類の送達などに必要な郵便費用などがあります。
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民事訴訟の提起手数料(収入印紙):
- 訴額(請求する金額)に応じて法律で定められています。訴額が大きくなるほど手数料も高くなります。
- 例えば、100万円の貸金返還請求訴訟を起こす場合、手数料は約1万円です。1000万円の場合は約5万円、1億円の場合は約32万円となります。
正確な金額は、裁判所のウェブサイトにある「手数料額早見表」などで確認できます。 - この手数料は「収入印紙」という形で納めます。
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予納郵券(郵便切手):
- 裁判所から当事者や証人に書類を送付するために必要となる郵便費用を、あらかじめ裁判所に預けるものです。「よのうゆうけん」と読みます。
- 事件の種類や当事者の人数によって金額が定められており、通常は数千円から1万円程度のセットを指定されることが多いです。手続きを進める上で不足した場合は追加で納める必要が生じます。
- これも郵便切手の現物で納めるのが原則です。
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その他の費用:
- 証人日当・旅費:証人尋問を行う場合、証人に対して支払う日当や交通費。
- 鑑定費用:専門家による鑑定が必要な場合にかかる費用。
- 謄写費用:裁判記録のコピーを取得する際の手数料。通常、1ページあたり数十円程度です。
- 弁護士費用:弁護士に依頼する場合、別途弁護士費用(着手金、報酬金など)が発生します。これは裁判所に納める費用とは別個のものです。
これらの費用は、原則として裁判所に手続きを申し立てる側が負担します。ただし、訴訟で勝訴した場合など、最終的に相手方に一部または全部の費用を負担させることができる場合もあります(訴訟費用負担の裁判)。
具体的な事件でかかる費用については、事前に裁判所の担当窓口や弁護士に相談することをお勧めします。
長野地方裁判所を【利用する際の主な手続き】はどうすればいい?
長野地方裁判所を利用する手続きは、申立ての種類によって大きく異なりますが、ここでは一般的な民事訴訟の流れと、裁判記録の閲覧・謄写、傍聴について説明します。
民事訴訟を提起する手続き
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訴状の作成:
- 誰が(原告)、誰に(被告)、何を(請求の趣旨)、なぜ(請求の原因)請求するのかを具体的に記載した「訴状」を作成します。
- 請求の原因については、証拠となる事実を整理し、証拠(契約書、領収書、写真など)を準備します。
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必要書類の準備:
- 訴状のほかに、請求の原因を裏付ける証拠書類の写し、当事者の住民票や登記事項証明書など、裁判の種類に応じた書類が必要です。
- 被告の数に応じて、訴状の副本(相手方用の写し)も必要となります。
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手数料・予納郵券の準備:
- 前述の「利用する際の費用」で説明した手数料(収入印紙)と予納郵券(郵便切手)を用意します。
- 収入印紙は、訴状に貼り付けて提出します。予納郵券は、郵便切手の束として窓口に提出します。
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裁判所への提出:
- 作成した訴状、必要書類、収入印紙、予納郵券を、長野地方裁判所の本庁または管轄する支部の民事訟廷事件係(窓口)に提出します。
- 提出する前に、書類に不備がないか、手数料や予納郵券が足りているかを確認しておくとスムーズです。窓口で簡単なチェックを受けられます。
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その後の流れ:
- 裁判所が訴状を受理すると、被告に訴状や裁判期日を記載した呼出状が送達されます。
- 指定された期日に裁判所に出廷し、審理が開始されます。書面のやり取りや証拠調べを経て、判決や和解によって事件が終了します。
ポイント:民事訴訟の手続きは複雑な場合があります。ご自身で行うことも可能ですが、法的な知識が必要となるため、弁護士に相談・依頼することも有効な手段です。裁判所の「受付」(総合窓口)や、「司法書士会」「弁護士会」による法律相談を利用することも検討してください。
裁判記録の閲覧・謄写手続き
長野地方裁判所で係属中または終了した事件の記録について、閲覧や謄写(コピー)を申請することができます。
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申請できる人:
- 原則として、事件の当事者や利害関係人に限られます。
- 第三者が閲覧できるかどうかは、事件の種類(刑事事件は原則公開など)や、プライバシー保護の観点から裁判所が個別に判断します。
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申請方法:
- 長野地方裁判所の記録係または担当部に備え付けの「記録閲覧・謄写申請書」に必要事項(事件番号、事件名、当事者名、閲覧・謄写を希望する書類など)を記入し、提出します。
- 身分証明書の提示を求められることがあります。
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費用:
- 閲覧には手数料(閲覧料)、謄写には手数料(謄写料)がかかります。これも収入印紙で納めます。
- 手数料額は法律で定められており、比較的安価です(例:謄写は1ページ数十円程度)。
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実施:
- 申請が許可されると、指定された場所(通常は記録係の部屋など)で記録を閲覧したり、コピー機で謄写したりできます。
- 記録の持ち出しはできません。
注意点:プライバシーに関わる情報や、裁判所の内部的な検討資料など、閲覧や謄写が制限される書類もあります。また、事件が完全に終了し、記録が保存期間を経過している場合は、閲覧できなくなることもあります。
裁判の傍聴手続き
日本の裁判は、憲法により原則として公開されており、誰でも自由に傍聴することができます。長野地方裁判所で行われる裁判も、原則として傍聴が可能です。
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場所と時間:
- 裁判所内の傍聴可能な法廷で行われます。法廷の入口付近に、その日に行われる裁判の予定表(開廷表)が掲示されていますので、どの法廷で何の事件が行われるか確認できます。
- 裁判は平日の日中に行われるのが通常です。開始時間は開廷表で確認してください。
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傍聴方法:
- 特別な手続きは不要です。直接、傍聴可能な法廷へ行き、空いている席に着席します。
- ただし、裁判員裁判など注目度の高い裁判や、収容人数を超える傍聴希望者がいる場合は、傍聴券が交付される抽せんとなることがあります。その場合は、裁判所が指定する時間・場所で整理券や傍聴券の交付を受けます。
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傍聴時の注意点:
- 法廷内では静粛にし、裁判官や関係者の発言を妨げる行為をしてはなりません。
- 録音、録画、写真撮影は禁止されています。携帯電話は電源を切るかマナーモードに設定し、使用は厳禁です。
- 飲食、喫煙も禁止です。
- 入廷・退廷は、裁判の進行を妨げないように、開廷中や証人尋問中などを避け、静かに行います。
- 不審物がないか、手荷物検査が行われることがありますので、協力が必要です。
傍聴は、裁判がどのように行われているのか、実際に目で見て知ることができる貴重な機会です。ルールを守って傍聴しましょう。
長野地方裁判所に【どうやって連絡】すればいい? 窓口は?
長野地方裁判所本庁への一般的な問い合わせは、代表電話番号を通じて行うことができます。
長野地方裁判所 代表電話:026-233-4926
この番号に電話をかけると、まず交換手や自動音声につながることが多いです。問い合わせたい内容に応じて、担当部署に回してもらうことになります。
- 民事事件に関する問い合わせ:民事訟廷事件係、民事部など
- 刑事事件に関する問い合わせ:刑事訟廷事件係、刑事部など
- 書類の提出や手続きに関する一般的な問い合わせ:総合窓口、受付
- 裁判員制度に関する問い合わせ:裁判員係など
- その他:総務課など
窓口の利用:
- 長野地方裁判所の窓口業務時間は、通常、平日の午前8時30分から午後5時00分までです。土日祝日、年末年始は業務を行っていません。
- 書類の提出や手続きに関する相談は、この時間内に裁判所の受付や担当部署の窓口で行います。
- 来庁する際は、事前に電話で担当部署や必要な書類、受付時間などを確認しておくと、無駄なく手続きを進めることができます。
注意点:
裁判所職員は、公平な立場から、手続きに関する一般的な説明は行いますが、個別の事件について有利・不利になるような具体的なアドバイスや、法的な解釈に関する判断を示すことはできません。事件の内容に関する相談や法的なアドバイスが必要な場合は、弁護士などの専門家に相談してください。
各支部の連絡先は、裁判所の公式サイトで確認するか、本庁の代表電話に問い合わせて確認してください。
その他:調停などの代替的紛争解決手段は利用できる?
長野地方裁判所では、訴訟手続きのほかに、裁判官や調停委員が当事者間の話し合いを仲介し、円満な解決を目指す「民事調停」などの代替的紛争解決(ADR)手続きも取り扱っています。
- 民事調停:
- 当事者双方の合意に基づいて紛争を解決する手続きです。
- 裁判官1名と調停委員2名以上で構成される調停委員会が、当事者双方から話を聞き、解決案を提示したり、助言を行ったりします。
- 訴訟よりも費用や時間がかからない場合が多く、非公開で行われるためプライバシーが守られやすいというメリットがあります。
- 調停で合意が成立すると、調停調書が作成され、これは確定判決と同じ効力を持ちます。
- 合意に至らなかった場合は、調停不成立となり、改めて訴訟を提起するかどうかを検討することになります。
- 訴訟上の和解:
- 民事訴訟の手続きが進んでいる間に、裁判官の仲介のもと、当事者双方が話し合って紛争を解決する手続きです。
- 訴訟中に和解が成立すると、その内容が和解調書に記載され、これも確定判決と同じ効力を持ちます。
- 訴訟を取り下げるよりも、和解による解決の方が紛争の蒸し返しを防ぐ上で有効な場合があります。
これらの手続きは、必ずしもすべての紛争に適しているわけではありませんが、当事者間の関係性を維持しつつ柔軟な解決を目指したい場合などに有効な手段となり得ます。長野地方裁判所の窓口や、法律専門家に相談して、どの手続きがご自身のケースに適しているか検討してみる価値はあります。
長野地方裁判所は、長野県における司法の中心的な機関として、多様な事件や手続きに対応しています。裁判所の利用を検討される際は、手続きの種類や費用、必要な書類などを事前に十分に確認し、不明な点があれば裁判所の窓口や弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。