身体障害者等級とは? – 制度の概要と対象

「身体障害者等級」とは、身体に永続する障害がある方々に対して、その障害の程度に応じて国が定めた基準に基づき区分される等級のことです。この等級は、後に詳述する「身体障害者手帳」の交付のために判定されるものであり、手帳を取得することで様々な福祉サービスや支援を受けることが可能となります。つまり、等級は支援の必要性の度合いを示す指標であり、それに基づいて具体的なサポートの内容やレベルが決まる重要な区分です。

身体障害者等級の対象となる障害

身体障害者福祉法に基づき、等級判定の対象となる障害は以下の1級から7級までの区分において、多岐にわたります。具体的な障害部位や機能の種類ごとに細かく基準が定められています。

  • 視覚障害: 視力や視野の制限に関する障害。
  • 聴覚障害: 聴力の制限に関する障害。
  • 平衡機能障害: 体の平衡を保つ機能に関する障害。
  • 音声・言語・咀嚼機能障害: 発声、言葉の理解・表現、噛むことに関する障害。
  • 肢体不自由: 手足や体幹の運動機能、または形態に関する障害。これには以下のものが含まれます。
    • 上肢不自由 (腕や手の機能・形態)
    • 下肢不自由 (脚や足の機能・形態)
    • 体幹不自由 (体の中心部分の機能・形態)
    • 脳原性運動機能障害 (脳の損傷に起因する運動障害)
  • 内部障害: 身体の内部にある臓器や機能に関する障害。以下のものが含まれます。
    • 心臓機能障害
    • 腎臓機能障害
    • 呼吸器機能障害
    • 膀胱・直腸機能障害
    • 小腸機能障害
    • ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害
    • 肝臓機能障害

これらの障害が、それぞれの部位や機能ごとに定められた基準(厚生労働省が定める身体障害者等級判定基準)に照らし合わせて、等級が判定されます。

等級区分について – 1級から7級まで

身体障害者等級は、1級から7級までの区分があります。

  • 1級: 最も障害の程度が重いとされる区分です。
  • 2級: 1級に次いで障害の程度が重い区分です。
  • 3級: 比較的重度の区分です。
  • 4級: 中等度の区分です。
  • 5級: 比較的軽度の区分です。
  • 6級: 最も障害の程度が軽い区分です。
  • 7級: 等級判定の対象となる障害ではありますが、単独の7級では原則として身体障害者手帳の交付対象とはなりません。 複数の7級の障害が重複している場合や、7級の障害と他の等級の障害を併せ持つ場合に、上位の等級として手帳の交付対象となることがあります。

等級の判定は、障害の種類ごとに定められた細かな基準に基づき行われます。例えば、視覚障害であれば視力や視野率、聴覚障害であれば聴力レベル、肢体不自由であれば関節の可動域や筋力などが具体的な判定基準となります。

等級によって何が変わる? – 身体障害者手帳と受けられる支援

身体障害者等級を取得する最大の目的は、身体障害者手帳の交付を受け、その等級に応じた様々な福祉サービスや支援制度を利用することです。手帳は、あなたが身体障害者であることを公的に証明するものであり、これらの支援を受けるための「鍵」となります。

身体障害者手帳とは

身体障害者手帳は、都道府県知事または政令指定都市の長が交付する公的な証明書です。この手帳には、氏名、住所、生年月日、障害の種類、障害の等級などが記載されています。各種の支援やサービスを利用する際に提示を求められます。

等級に応じた主な支援・サービス

受けられる支援の内容は、主に身体障害者手帳に記載された等級によって異なります。一般的に、等級が重くなるほど、より手厚い支援の対象となります。ただし、具体的なサービスの内容や基準は、お住まいの市区町村によって独自のものが加わっていたり、詳細が異なっていたりする場合があるため、必ずお住まいの自治体の窓口で確認することが重要です。

経済的な支援

  • 医療費助成: 医療機関での自己負担額の一部または全額が助成される制度があります(所得制限がある場合が多いです)。
  • 各種手当: 障害の程度や状況に応じた様々な手当が支給される場合があります(特別障害者手当、障害児福祉手当など。これらは障害年金とは別の制度です)。
  • 税の控除・減免: 所得税や住民税の障害者控除、相続税、自動車税・自動車取得税の減免などが受けられる場合があります。

日常生活・社会生活に関する支援

  • 補装具・日常生活用具の交付・修理: 義肢、装具、車椅子、歩行補助具などの補装具の購入・修理費用や、入浴補助用具、特殊寝台などの日常生活用具の購入費用の一部または全額が助成されます。等級や種別によって対象となる品目や自己負担額が異なります。
  • 公共交通機関の割引: 鉄道、バス、タクシー、航空運賃などの割引が受けられる場合があります。本人だけでなく、介護者も割引の対象となることがあります(等級による制限あり)。
  • 各種施設の利用料割引: 美術館、博物館、公園、スポーツ施設などの公的施設の利用料が割引または免除されることがあります。
  • 有料道路の割引: 事前に登録することで、有料道路の通行料金が割引になる制度があります。
  • 駐車禁止除外指定: 条件を満たせば、駐車禁止区域に駐車が認められる「駐車禁止除外指定車標章」の交付を受けられる場合があります。
  • 優先席利用: 公共交通機関などで優先席を利用する際に、手帳が根拠の一つとなります。
  • 住宅改修費助成: 自治体によっては、自宅を障害に合わせて改修する費用の一部を助成する制度があります。

就労に関する支援

  • 障害者雇用枠: 障害者を対象とした企業の雇用枠に応募する際に、手帳が証明となります。
  • 就労移行支援事業所等の利用: 就職のための訓練や支援を受けられる事業所を利用しやすくなります。
  • 各種相談支援: 就労に関する専門的な相談支援を受けることができます。

繰り返しになりますが、これらの支援は等級によって受けられるものが異なり、また自治体独自の制度も多いため、詳細はお住まいの市区町村の障害福祉担当窓口にご確認ください。

身体障害者手帳の申請と等級判定の流れ

身体障害者手帳を取得し、等級の判定を受けるための手続きは、以下の流れで進みます。

申請に必要なもの・場所

手帳の申請は、原則としてお住まいの市区町村の障害福祉担当窓口で行います。申請に必要な主なものは以下の通りです。

  • 身体障害者手帳交付申請書: 市区町村の窓口で入手できます。所定の様式があります。
  • 身体障害者診断書・意見書: この書類が等級判定の最も重要な根拠となります。
  • 本人の写真: 通常、縦4cm×横3cm程度の顔写真が必要です。
  • マイナンバー(個人番号)に関する書類: 申請者のマイナンバーを確認するための書類が必要です。
  • その他、自治体によっては印鑑などが必要な場合があります。

診断書・意見書の作成と指定医

身体障害者診断書・意見書は、都道府県知事または政令指定都市の長が指定した医師(指定医)のみが作成できます。申請する障害の種類(視覚、肢体不自由、心臓など)に応じて、それぞれの専門分野の知識を持つ指定医に診察を受け、診断書を作成してもらう必要があります。

指定医は、あなたの障害の状態を医学的に診断し、等級判定基準に基づいて意見書を作成します。この診断書・意見書の内容が、後の等級判定に大きく影響します。診断書作成には医師の費用が発生します。

等級判定のプロセス

申請書類(特に診断書・意見書)が市区町村の窓口を通じて都道府県または政令指定都市に送付されると、そこで等級判定が行われます。

判定は、提出された診断書・意見書の内容に基づき、都道府県等の判定医や専門家が、厚生労働省が定めた身体障害者等級判定基準に厳密に照らし合わせて行われます。この基準には、障害の種類ごとに、どのような状態がどの等級に該当するかが細かく定められています。

例えば、聴覚障害の基準では聴力レベル(デシベル)や語音弁別能力、肢体不自由の基準では関節可動域(ROM)や筋力(MMT)、日常生活動作(ADL)の遂行能力などが数値や具体的な状態として示されており、これらの基準に従って機械的かつ客観的に等級が決定されます。

判定が完了すると、その結果が市区町村を通じて申請者に通知されます。判定基準に満たない場合は、手帳が交付されないこともあります。特に前述の通り、7級単独の障害では手帳交付の対象とならない場合が多いので注意が必要です。

手帳の交付

判定結果に基づき、手帳が交付されることが決定した場合、申請した市区町村の窓口で身体障害者手帳を受け取ります。受け取り方法は、郵送または窓口での交付となります。申請から交付までにかかる期間は、一般的に1ヶ月から2ヶ月程度ですが、申請時期や内容、自治体の状況によってこれより長くかかる場合もあります。

等級の見直しや変更、不服申し立てについて

再認定(等級の見直し)

障害の種類によっては、将来的に状態が変化する可能性のあるもの(例えば、進行性の疾患や、回復の見込みがある障害など)があります。このような場合、手帳に一定期間後の再認定が必要である旨が記載されることがあります。再認定の時期が来たら、再度指定医の診察を受け、診断書を提出して等級の再判定を受ける必要があります。

また、手帳に再認定の記載がない場合でも、ご自身の障害の状態が明らかに重くなった、または軽くなったと感じる場合には、申請により等級の変更のための再認定を受けることができます。状態が悪化した場合はより重い等級に、改善した場合はより軽い等級に変更される可能性があります。

不服申し立て

交付された手帳の等級判定結果や、手帳が交付されなかった判定結果に納得できない場合、その決定に対して不服を申し立てることができます。

不服申し立ては、行政不服審査法に基づき、その決定を行った都道府県知事または政令指定都市の長に対して行います。申し立ての期間は、通常、判定結果を知った日の翌日から一定期間(原則3ヶ月)以内と定められています。申し立てを行う際は、不服の理由を具体的に記載した文書(審査請求書)を提出する必要があります。

よくある疑問点

申請から交付までの期間は?

市区町村の窓口で申請してから手帳が交付されるまでは、通常1ヶ月~2ヶ月程度です。ただし、診断書の内容確認に時間がかかる場合や、自治体の事務処理状況によっては3ヶ月以上かかることもあります。

申請費用はかかる?

身体障害者手帳の申請自体に手数料はかかりません。ただし、申請に必要な「身体障害者診断書・意見書」を作成してもらうための医師の診察費用や文書作成費用は自己負担となります。この費用は医療機関によって異なりますので、事前に確認することをお勧めします。また、写真代なども必要になります。

手帳をなくしたら?

身体障害者手帳を紛失したり、汚損・破損したりした場合は、再交付の申請が可能です。申請窓口はお住まいの市区町村の障害福祉担当窓口です。再交付申請書、写真、場合によっては本人確認書類などが必要になります。

身体障害者等級は、障害のある方々が社会生活を送る上で必要な様々な支援やサービスを受けるための重要な基盤となります。制度の概要や申請方法、受けられる支援について正しく理解し、必要に応じて適切な手続きを進めることが、より安心した生活を送るための一助となります。ご不明な点があれば、まずはお住まいの市区町村の障害福祉担当窓口に相談してみることをお勧めします。


身体障害者等級

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