【脂肪腫手術】とは?必要性、方法、費用、どこで受けられるか、リスクと回復過程について詳細解説

脂肪腫(しぼうしゅ)は、皮膚の下にできる良性の脂肪組織の塊です。柔らかく、通常は痛みはありませんが、大きくなったり、体の動きを妨げたり、見た目が気になったりする場合があります。脂肪腫手術は、この脂肪腫を外科的に除去する処置です。

脂肪腫手術とは具体的に何ですか?

脂肪腫手術とは、体表にできた脂肪腫を、メスやその他の器具を用いて外科的に取り除く医療行為です。主に皮膚を切開し、脂肪腫を周囲の組織から剥離(はくり)して摘出します。摘出後は切開部を縫合します。

なぜ脂肪腫手術が必要とされるのですか?

脂肪腫は基本的に良性であるため、必ずしもすべてを手術で取り除く必要はありません。しかし、以下のような場合に手術が検討されます。

  • 審美的問題:特に顔や首、露出の多い部位など、見た目が気になる場合。
  • 痛みや圧迫感:脂肪腫が大きくなり、神経を圧迫したり、周囲の組織を圧迫することで痛みや不快感を引き起こす場合。
  • 増大:脂肪腫が時間とともに大きくなり続けている場合。将来的な症状の悪化や手術の複雑化を防ぐために、大きくなる前に切除することがあります。
  • 可動性の制限:関節の近くなどにでき、体の動きを妨げる場合。

  • 診断の確定:触診や画像検査で脂肪腫が強く疑われる場合でも、悪性腫瘍(脂肪肉腫など)である可能性を完全に否定できない場合があります。病理検査で確定診断を得るために切除する場合があります。特に急に大きくなった、硬い、痛みを伴うなどの特徴がある場合は、診断目的での切除が推奨されることがあります。

脂肪腫手術はどこで受けられますか?

脂肪腫手術は、体のどの部位にできたか、脂肪腫の大きさや深さなどによって、主に以下の医療機関や診療科で受けることができます。

  • 形成外科:傷跡を目立たなくすることに特化した診療科です。特に顔や首など、審美性が重視される部位の脂肪腫手術に適しています。
  • 皮膚科:体表の疾患を専門とするため、比較的小さく浅い脂肪腫であれば皮膚科クリニックで対応可能です。
  • 外科・一般外科:大きな脂肪腫や、筋肉の近くなど深部にできた脂肪腫、または診断が難しい場合などは、全身麻酔が必要となることもあり、総合病院などの外科で手術が行われることがあります。
  • 整形外科:手足の関節周辺など、運動器に近い部位の脂肪腫の場合は、整形外科医が担当することもあります。

どの医療機関や診療科を選ぶかは、脂肪腫の状態や医師の専門性によって異なります。まずはかかりつけ医に相談するか、形成外科や皮膚科を受診して相談するのが一般的です。

脂肪腫手術の費用はどれくらいですか?

脂肪腫手術の費用は、様々な要因によって変動します。

  • 脂肪腫の大きさ・個数:小さいものより大きいもの、1個より複数個の場合の方が費用は高くなります。
  • 手術の難易度:深部にあるもの、神経や血管に近いもの、過去に手術をして再発したものなどは難易度が高くなり、費用が増加する可能性があります。
  • 麻酔の種類:多くの脂肪腫手術は局所麻酔で行われますが、大きいものや複数個、深部のものなどでは全身麻酔が必要となる場合があり、全身麻酔の場合は費用が高くなります。
  • 入院の有無:局所麻酔での手術は日帰りが多いですが、全身麻酔の場合や、術後の管理が必要な場合は入院となり、入院費用がかかります。
  • 医療機関の種類:クリニックより病院、公立病院より私立病院の方が費用設定が異なる場合があります。
  • 保険適用:脂肪腫手術は、医学的な必要性(痛み、増大、診断目的など)があると医師が判断すれば、基本的に健康保険が適用されます。この場合、医療費の自己負担額は通常3割(年齢や所得により1〜3割)となります。純粋な審美目的(小さくても見た目だけが理由)の場合は保険適用外(自費診療)となることもありますが、医師の判断によります。

具体的な費用は、手術前に担当医や医療機関の事務スタッフに確認することが重要です。保険適用となった場合の自己負担額の目安は、大きさや麻酔の種類、入院の有無によって数千円から数万円程度となることが多いですが、これはあくまで目安であり、個々の状況によって大きく異なります。

※保険適用の場合、高額療養費制度の対象となることもあります。月の医療費自己負担額が一定額を超えた場合、超えた分の払い戻しを受けられる制度です。

脂肪腫手術はどのように行われますか?(手術方法と流れ)

脂肪腫手術の一般的な方法と流れは以下の通りです。

手術前の準備

  • 診察と検査:医師が脂肪腫の状態(大きさ、硬さ、位置、深さなど)を診察し、必要に応じて超音波検査やMRI検査などの画像検査を行います。悪性腫瘍との鑑別や、周囲の重要な組織との位置関係を確認するためです。
  • 説明と同意:手術方法、リスク、合併症、費用、回復過程などについて医師から説明を受け、手術同意書に署名します。
  • 術前検査:必要に応じて、採血、心電図、レントゲンなどの術前検査を行います。
  • 剃毛・マーキング:手術部位の毛を剃る必要がある場合があり、手術部位にマーキングを行います。

手術中

手術は局所麻酔で行われることが多いですが、脂肪腫が大きい場合や深部にある場合、患者さんが希望する場合は全身麻酔で行われることもあります。

  1. 麻酔:手術部位に局所麻酔薬を注射します。全身麻酔の場合は、麻酔科医によって全身麻酔が施されます。
  2. 切開:脂肪腫の大きさに合わせて、皮膚に切開を加えます。傷跡を目立たなくするため、皮膚のしわの線に沿って切開したり、最小限の長さにしたりする工夫がされます。
  3. 剥離と確認:切開部から脂肪腫を周囲の正常組織から慎重に剥離していきます。脂肪腫は通常、被膜(カプセル)に包まれているため、被膜ごと完全に剥離することが再発予防のために重要です。
  4. 摘出:剥離した脂肪腫を体外に摘出します。
  5. 止血:出血している血管などを適切に処置し、止血を行います。
  6. 縫合:脂肪腫を摘出した後の空間(デッドスペース)を最小限にするよう処置(必要に応じてドレーン挿入や圧迫)し、切開部を縫合します。皮膚の表面は細い糸や医療用ホッチキス、テープなどで閉じます。
  7. 病理検査:摘出した脂肪腫は、良性であることを確認するために病理検査に提出されるのが一般的です。

手術方法の選択肢

  • 定型的切除術:脂肪腫の真上の皮膚を切開し、直接目で確認しながら脂肪腫を剥離・摘出する方法です。最も一般的で確実な方法です。
  • 小切開摘出術:脂肪腫の大きさに対して比較的小さな切開で行う方法です。特に形成外科で行われることがあり、傷跡を小さく抑えることを目的とします。器具を使って脂肪腫を細かくしてから取り出すなどの工夫がされることがあります。
  • 脂肪吸引術:ごく小さな切開からカニューレを挿入し、脂肪吸引のように脂肪腫を吸い出す方法です。傷跡は非常に小さいですが、被膜が完全に除去されない場合があり、再発のリスクが定型切除術より高くなる可能性があります。適用できる脂肪腫の大きさや部位に限りがあります。

脂肪腫手術後の回復過程はどのようなものですか?

手術後の回復過程は、脂肪腫の大きさ、部位、手術方法、個人の治癒力によって異なりますが、一般的な流れは以下の通りです。

  • 術直後:手術部位にはガーゼやテープ、包帯などで傷口が保護されます。局所麻酔の場合、麻酔が切れると痛むことがありますが、痛み止めが処方されます。全身麻酔の場合は、麻酔からの回復に時間がかかります。
  • 抜糸まで:手術部位や縫合方法によりますが、通常1週間〜2週間程度で抜糸が行われます。それまでの期間は、医師の指示に従って傷口の消毒やガーゼ交換を行います。シャワーや入浴は、傷口を濡らさないように注意すれば可能な場合が多いですが、これも医師の指示に従ってください。
  • 抜糸後:抜糸後は、傷口がさらに安定してきます。必要に応じて、傷跡をきれいに保つためのテープ(肌色のサージカルテープなど)による固定を数週間〜数ヶ月続けるよう指導されることがあります。
  • 活動制限:手術部位によりますが、術後数日間は激しい運動や重い物を持つことなど、傷口に負担がかかるような活動は避ける必要があります。日常生活に戻れるまでの期間は、脂肪腫の大きさや部位によって異なります。

  • 回復期間:痛みや腫れは通常数日〜1週間程度で落ち着いてきます。傷口の赤みや硬さは数ヶ月かけて徐々に改善していきます。完全に傷跡が成熟して目立たなくなるまでには、数ヶ月から1年程度かかるのが一般的です。

脂肪腫手術の潜在的なリスクや合併症は何ですか?

どのような手術にもリスクが伴いますが、脂肪腫手術は比較的安全な手術とされています。考えられるリスクや合併症には以下のようなものがあります。

  • 出血:手術中や術後に出血が起こることがあります。稀に血腫(血液の塊)ができることがあります。
  • 感染:手術部位が細菌に感染することがあります。発赤、腫れ、痛み、膿などの症状が現れます。抗生物質による治療が必要になります。
  • 瘢痕(傷跡):切開を伴う手術であるため、必ず傷跡が残ります。体質によっては、傷跡がケロイドや肥厚性瘢痕として盛り上がったり、赤みが強く残ったりすることがあります。
  • 漿液腫(しょうえきしゅ):脂肪腫を摘出した後の空間に体液が溜まることがあります。少量であれば自然に吸収されますが、量が多い場合は注射器で抜いたり、ドレーンを留置したりする処置が必要になることがあります。
  • 神経損傷:脂肪腫が神経の近くにある場合、神経を傷つけてしまい、一時的または永続的なしびれ、感覚麻痺、まれに運動麻痺が生じることがあります。
  • 再発:脂肪腫の被膜を含めて完全に切除されなかった場合や、別の場所に新たに発生した場合に再発することがあります。
  • 疼痛:手術後に痛みが続くことがあります。
  • 麻酔による合併症:局所麻酔や全身麻酔によるアレルギー反応や、その他の合併症が稀に起こり得ます。

これらのリスクについては、手術前に担当医から十分に説明を受け、理解した上で手術を受けることが重要です。

どのような場合に手術を検討すべきですか?

前述の「なぜ必要ですか?」の項目で挙げた理由に当てはまる場合、手術を検討するタイミングと言えます。特に、痛みを伴う場合、急速に大きくなっている場合、深部にある場合、あるいは見た目のストレスが大きい場合は、早めに医療機関を受診して専門医に相談することをお勧めします。医師は、脂肪腫の状態や患者さんの希望を総合的に判断し、手術の適応や最適な時期についてアドバイスしてくれます。

脂肪腫手術は比較的簡単な手術であることも多いですが、体の状態や脂肪腫の性質は一人ひとり異なります。不安な点や疑問点は、遠慮なく医師に質問し、納得した上で治療法を選択することが大切です。

脂肪腫手術

By admin

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