能登半島地震における震度
2024年1月1日に石川県能登地方を襲った地震は、広範囲に甚大な被害をもたらしました。この地震の揺れの大きさを表す指標の一つに「震度」があります。地震の規模を示す「マグニチュード」とは異なり、震度はある場所での揺れの強さを表すもので、地盤の状況や建物構造によって同じ地震でも場所によって異なります。能登半島地震では、最大震度7という、日本の気象庁震度階級における最大の揺れが観測されました。
能登半島地震の最大震度:震度7は何を意味するのか?
能登半島地震で観測された最大震度は震度7です。これは日本の気象庁が定める震度階級で最も高いレベルであり、経験したことのないような猛烈な揺れを意味します。震度7は、特定の場所で観測された「揺れの強さ」の指標であり、地震そのもののエネルギーを示すマグニチュードとは異なります。
気象庁震度階級について
日本の気象庁震度階級は、地震による地表や建造物の揺れの強さを0から7までの10段階で示します。震度5と6にはそれぞれ「弱」と「強」があり、合計10段階となります。
- 震度0:人が揺れを感じない
- 震度1:屋内にいる人の一部がわずかな揺れを感じる
- 震度2:屋内にいる人の多くが揺れを感じる
- 震度3:屋内にいる人のほとんどが揺れを感じる
- 震度4:ほとんどの人が驚く
- 震度5弱:棚から物が落ちたり、不安定な家具が倒れることがある
- 震度5強:固定していない家具の多くが倒れる
- 震度6弱:立っているのが困難になる
- 震度6強:這わないと動けない
- 震度7:立っていることができず、揺れにほんろうされ動くこともできない
震度7による典型的な被害
気象庁は、震度7の揺れによって起こりうる状況として、以下のような例を挙げています。
- 地割れや地すべりが多数発生し、大規模な地形の変化が生じる
- 多くの家屋が傾いたり倒壊したりする
- 耐震性の低い木造家屋は、そのほとんどが倒壊する
- 鉄筋コンクリート造りの建物でも、壁や柱が破壊されるものが多くなる
- インフラ(電気、ガス、水道、交通網)が壊滅的な被害を受ける
能登半島地震での被害状況は、まさにこの震度7の定義通りの、あるいはそれを上回る深刻なものでした。
能登半島地震で震度7が観測されたのはどこか?
今回の能登半島地震(令和6年能登半島地震)において、気象庁により震度7が観測された地点は複数あります。
具体的には、以下の市町で震度7が観測されました。
- 石川県志賀町
- 石川県輪島市
これらの地点は、地震発生当初の速報値、その後の精査によって確定した値として報告されています。特に輪島市では、市の中心部を含む広い範囲で極めて強い揺れに見舞われたと考えられています。志賀町でも、沿岸部を中心に激しい揺れが観測されています。
震度7が観測された地点は、地震の震源域にごく近い場所に位置しており、断層破壊が地表に達するほどの強い揺れが発生したことを示しています。
震度はどうやって測るのか?
地震の震度は、人間の感覚や建物の被害状況から判断されていた時代もありましたが、現在では震度計(しんどけい)という計測機器によって機械的に測定されています。
震度計の仕組み
現在の震度計は、地震による地面の加速度を東西、南北、上下の3方向に高精度で測定します。この測定された加速度波形から、地震の揺れの周期や振幅などを考慮して、計測震度と呼ばれる値を計算します。
計測震度は、地震波の継続時間も考慮して計算される特殊な値で、人の体感や建物の被害との対応が良いように工夫されています。気象庁震度階級は、この計測震度を小数点以下第2位で四捨五入し、その値に応じて定められています。例えば、計測震度が6.5以上であれば震度7と判定されます。
日本国内には、気象庁や地方公共団体などによって多数の震度計が設置されており、地震発生時にはこれらの観測網から瞬時にデータが収集・解析され、震度情報として発表されます。能登半島地震の際も、これらの震度計ネットワークが稼働し、各地の震度が迅速に報じられました。
なぜ場所によって震度が違うのか?
同じ地震でも、震源からの距離が近いほど、通常は揺れは強くなりますが、それだけが震度を決める要因ではありません。能登半島地震のように、限られた範囲で極端に高い震度が出る背景には、いくつかの要因が複合的に関わっています。
震度を決める主な要因
- 震源からの距離と深さ: 震源が浅く、かつ観測地点が震源にごく近いほど、揺れは強くなる傾向があります。能登半島地震は比較的浅い地震でした。
- 地震の規模(マグニチュード): 地震そのもののエネルギーが大きいほど、揺れは遠くまで伝わりやすくなります。
- 断層破壊の進展: 大地震では、断層が長い距離にわたって破壊が進みます。この断層破壊がどこまで進んだか、どの方向に進んだかによって、特定の方向や場所の揺れが強くなることがあります。能登半島地震は、震源断層が陸域や沿岸部を通っていたため、直上の地域の揺れが非常に強くなったと考えられます。
- 地盤の状況(地盤増幅): 地震の揺れは、硬い地盤よりも、軟らかい堆積層や埋立地などの地盤でより大きく増幅される特性があります。これを「地盤増幅」と呼びます。能登半島の沿岸部や平野部には、揺れやすい地盤が存在しており、これが特定の地域の震度を押し上げた要因の一つと考えられます。特に沖積平野や谷筋、海岸沿いの軟弱な地盤では、固有の周期の揺れが増幅されやすいです。
- 地形の影響: 盆地の端や山頂部、切り立った崖の上なども、揺れが集中したり増幅されたりすることがあります。
- 建物構造との共振: 地震波の周期と建物の固有周期が一致すると、揺れが特に大きくなる「共振」現象が起こり、特定の種類の建物で被害が大きくなることがあります。これは震度そのものの測定値には直接影響しませんが、体感や被害に大きく関わります。
能登半島地震では、震源が陸域に近く浅かったこと、そして輪島市や志賀町などの震度7観測地域に存在する、揺れを増幅しやすい地盤の特性が重なり、極めて強い揺れが発生したと考えられています。
能登半島地震のその他の震度観測状況は?
能登半島地震では、震度7の地域だけでなく、能登半島全域や周辺の広い範囲で強い揺れが観測されました。
- 震度6強: 石川県穴水町
- 震度6弱: 石川県七尾市、石川県羽咋市、石川県宝達志水町
- 震度5強: 石川県能登町、石川県中能登町、富山県氷見市、富山県小矢部市
その他、北陸地方を中心に、新潟県、福井県、岐阜県、長野県などでも震度5弱以上の揺れが観測されており、この地震が広範囲に影響を及ぼしたことがわかります。
最大震度だけでなく、震度5強や震度6といったレベルでも、多くの家屋倒壊や土砂災害、インフラの損壊が発生しており、各地で深刻な被害が出ています。震度分布は、まさにこの地震がもたらした被害の範囲と大きさを理解するための重要な情報源となります。
能登半島地震における震度7という値は、単なる数字ではなく、その地域で発生した想像を絶する揺れの激しさと、それに伴う壊滅的な被害を示しています。震度計による正確な測定と、そのデータに基づいた迅速な情報伝達は、被災地の現状把握とその後の救援・復旧活動にとって不可欠です。今回の地震で得られた詳細な震度データは、今後の耐震対策や防災計画の見直しにおいても極めて重要な教訓となるでしょう。