特別送達とは?なぜ必要?そしてその「料金」は何の対価?

特別送達(とくべつそうたつ)とは、郵便法に基づき、訴訟に関する書類など、受取人に確実に届けたこと、およびそれがいつ相手に到達したかを公的に証明する必要がある重要な書類を送付する際に利用される、特別な郵便サービスの一つです。単に速く届けるサービスや、損害を補償するサービスとは異なり、その最大の目的は「特定の相手に対し、法律上定められた方法で、確実に書類が到達したことを証明する」ことにあります。

なぜこのような特別な方法が必要なのでしょうか?それは、裁判やその他法律上の手続きにおいて、関係者(特に被告や相手方)が「書類を受け取っていない」と主張することで手続きが進まなくなったり、あるいは権利や義務が発生・消滅したりする重要な時点を確定させる必要があるからです。普通郵便や内容証明郵便だけでは、法的な「送達の効力」が発生しない、あるいは争いになる可能性があるため、特別送達という厳格な方法が定められています。

したがって、特別送達料金(とくべつそうたつりょうきん)とは、単なる郵便物の運送費ではなく、この「法律上の送達を確実に行い、その事実(いつ、誰に、どのように届けたか)を公的に証明する」という特別な役務に対する対価なのです。

どのような書類が特別送達で送られるの?

特別送達が利用される主な書類は、その性質上、受け取りが法律上の効果を持つものです。

  • 裁判所からの呼び出し状(期日呼出状)
  • 訴状
  • 判決謄本
  • 支払督促
  • 公正証書の謄本
  • 差押命令
  • その他、法律で特別送達が義務付けられている書類

これらの書類は、受け取ったかどうかが裁判の進行や権利義務に直結するため、特別送達による厳格な手続きが取られます。

特別送達の料金はいくら?費用体系について

特別送達の料金は、一般的な郵便料金に加えて、特別送達という特殊な取り扱いに対する料金が加算されて決まります。基本的な構成は以下のようになっています。

  • 基本郵便料金: 送付する書類の重さやサイズに応じた通常の郵便料金(第一種郵便物)。
  • 特別送達料金: 特別送達サービスそのものに対する料金。これは郵便物のサイズや重さに関わらず、一律の金額が定められています。
  • 書留料(多くの場合): 特別送達は通常、書留としても扱われるため、書留料も加算されます。これにより、郵便物の追跡や損害賠償(特別送達の目的からは二次的ですが)の仕組みが付与されます。
  • その他加算料金(必要な場合):
    • 引換金:代金引換とする場合
    • 速達料:特に急ぐ場合(ただし、特別送達は通常の手紙よりも速達扱いされることが多いですが、さらに速達指定することも可能です)
    • 本人限定受取:受取人本人のみが受け取れるようにする場合
    • 内容証明料:内容証明郵便として送る場合(特別送達で内容証明を送るケースもあります)

これらの合計が、実際に窓口で支払う特別送達の総額料金となります。特別送達料金自体は一律ですが、基本郵便料金や書留料、その他オプションによって最終的な金額は変動します。

【重要】正確な最新料金を確認するには

郵便料金は改定されることがあります。最も正確で最新の料金を知るには、必ず日本郵便の公式ウェブサイトを確認するか、最寄りの郵便局窓口で問い合わせてください。ウェブサイトでは、「国内の料金表」→「オプションサービスの料金」などの項目から特別送達に関する料金情報を確認できます。

特別送達の「送り方」(差出人側)

特別送達で書類を送付する手続きは、通常の郵便とは少し異なります。主に以下の手順で行います。

  1. 書類と封筒の準備:

    送付する書類を準備し、封筒に入れます。封筒の表面には、受取人の正確な住所・氏名を記載します。また、封筒には「特別送達」である旨を明記する必要があります。市販の特別送達用の封筒を利用するか、通常の封筒に「特別送達」と朱書きするなどします。

  2. 差出人情報の記載:

    封筒の裏面などに差出人の住所・氏名を記載します。

  3. 郵便局の窓口へ持参:

    特別送達は、ポストに投函することはできません。必ず郵便局の窓口に持参し、差し出しの手続きを行います。

  4. 必要書類の提出(場合による):

    裁判所からの送達嘱託書など、特定の書類に添付して特別送達を依頼する場合もあります。個人の間で利用する場合でも、内容物について説明を求められることがあります。

  5. 料金の支払い:

    窓口で、書類の重さや希望するオプションに応じた特別送達料金を支払います。現金や切手(利用可能な場合)で支払います。

  6. 控えの受け取り:

    差し出しの手続きが完了すると、郵便局から特別送達を受け付けたことの証明となる控え(受付票)が交付されます。これには追跡番号なども記載されており、配達状況を確認したり、後日交付される送達報告書と照合したりする際に必要となるため、大切に保管します。

裁判所が直接、または弁護士を通じて送達嘱託を行う場合は、手続きがやや異なりますが、基本的な「料金を支払い、郵便局が責任を持って送達する」という仕組みは同じです。

特別送達の「受け取り方」(受取人側)

特別送達は、その法的な重要性から、受け取り方法にも厳格なルールがあります。

  1. 配達:

    郵便配達員が名宛人の住所へ直接訪問します。原則として、休日や夜間でも配達される可能性があります(ただし、時間帯指定ができるわけではありません)。

  2. 本人または同居家族への手渡し:

    特別送達は、原則として名宛人本人、またはその住居で生計を共にしている同居の家族に手渡しされます。会社の代表者宛であれば、会社の受取権限のある従業員が受け取ることも可能です。単なる知人や友人が代わりに受け取ることはできません。

  3. 署名または押印:

    書類を受け取った証として、受取人またはその同居家族は、配達員が持参する「送達報告書」や受領証に氏名を署名または押印する必要があります。この署名・押印が、後に「確かに送達された」ことの重要な証拠となります。

  4. 不在の場合:

    配達時に受取人が不在だった場合、郵便受けに「郵便物等お預りのお知らせ」(不在通知票)が投函されます。この通知票には、差出人名、郵便物の種類(特別送達である旨)、配達日時、保管期間、再配達の依頼方法などが記載されています。通知票に従って、保管期間内に郵便局に連絡して再配達を依頼するか、本人確認書類と印鑑(または署名)、通知票を持って郵便局の窓口で受け取ります。

  5. 再配達や窓口での受け取りもできない場合:

    保管期間を過ぎても受け取られなかった場合、特別送達は差出人に返還されます。ただし、法律上、一定の要件を満たせば、郵便局の窓箱に置く「差置送達(さしおきそうたつ)」や、書留郵便として送る「書留郵便に付する送達」など、手渡し以外の方法でも送達の効力が認められる場合があります。これは書類の種類や状況によって異なり、裁判所の判断などが関わってきます。

  6. 受け取りを拒否した場合:

    特別送達は、受取人がその内容を知るか知らないかにかかわらず、法律上の効果を発生させるために行われます。したがって、受け取りを拒否しても、法律上は「送達された」とみなされることがほとんどです。配達員は受取拒否があった旨を記録し、書類は差出人に戻されますが、これにより手続きが止まることは基本的にありません。

特別送達を受け取った場合は、その内容を速やかに確認し、必要に応じて専門家(弁護士など)に相談することが非常に重要です。安易に放置したり、受け取りを拒否したりすると、自身の権利や法的な立場に不利益が生じる可能性があります。

特別送達と書留郵便の違いは何?

特別送達と書留郵便は、どちらも郵便物の追跡や記録が行われる点では似ていますが、目的と法的な位置づけが大きく異なります。

  • 書留郵便: 郵便物の引受から配達までの過程を記録し、万が一の場合に損害賠償を行うことを主な目的とします。内容証明と組み合わせることで、送付した内容と日付を証明することも可能ですが、「相手が受け取ったことを公的に証明する」という点では、特別送達ほどの厳格性や法的な効力はありません。
  • 特別送達: 上記の通り、「法律上の送達」という特殊な目的のために存在します。郵便法だけでなく、民事訴訟法などの法律に基づいて行われ、送達した日時、場所、受け取った人物などを証明する「送達報告書」が作成される点が最大の特徴です。この報告書は公的な証明書として、裁判などで重要な証拠となります。多くの場合、特別送達は書留の扱いを兼ねますが、その本質は損害賠償よりも「送達の証明」にあります。

つまり、特別送達は書留よりも一段階上の、法的な手続きに特化した送達方法であり、そのための追加サービス料金が特別送達料金として課されるのです。

特別送達は、受け取る側にとっては時に身構えてしまうような性質を持っていますが、その仕組みは法的な手続きの透明性と確実性を担保するために不可欠なものです。特別送達料金は、この重要な「証明」というサービスに対する費用であると理解すると良いでしょう。送り方、受け取り方、料金体系について正しく知っておくことは、万が一自身が特別送達に関わることになった際に役立ちます。


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