「就労支援B型」という言葉を耳にしたことはありますか?
働きづらさを抱える方が利用できる福祉サービスの一つですが、具体的にどのような場所で、どんな人が使えて、費用はどのくらいかかるのかなど、わからないことも多いかと思います。
この記事では、就労支援B型に関してよくある疑問に、具体的かつ詳細にお答えします。
就労支援B型って何?具体的な活動内容は?
何をする場所なの?
就労支援B型事業所は、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの一つです。
病気や障害によって一般企業での就労や、後述する就労継続支援A型事業所での勤務が難しい方が、雇用契約を結ばずに軽作業などの就労訓練や生産活動を行う場を提供します。
大きな目的は、働くことへの慣れ、生活リズムの安定、作業能力や社会性の向上、そして社会参加の機会を提供することです。
A型と異なり、雇用契約がないため、利用者は比較的自分のペースで、体調に合わせて通所することができます。必須の勤務日数や時間に縛られにくいのが特徴です。
どんな活動(仕事)があるの?
事業所によって内容は多岐にわたりますが、利用者の方が無理なく取り組めるよう、比較的簡単な作業が多いです。具体例としては以下のようなものがあります。
- 軽作業(部品の袋詰め、検品、シール貼りなど)
- 内職(手芸品の作成、チラシ折り込みなど)
- 清掃作業(事業所内や近隣の施設など)
- データ入力や簡単なPC作業
- カフェやパン工房などでの調理補助、接客
- 農作業(野菜の栽培、収穫)
- リサイクル品の分別、解体
- DMの封入、発送準備
これらの作業を通じて、「働く」という経験を積むことや、基本的な作業スキルやコミュニケーション能力を身につけることを目指します。
誰が使えるの?なぜ就労支援B型を選ぶの?
どんな人が利用できるの?(利用対象者)
就労支援B型事業所を利用できるのは、主に以下の条件を満たす方です。
- 身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、難病などがあり、障害者手帳を持っている方、または自治体の判断により障害福祉サービスの利用が認められる方。
- 年齢が18歳以上65歳未満であること(65歳以上でも、特定の場合は利用できることがあります)。
- 一般企業や就労継続支援A型事業所などで雇用されることが困難な方。
特に、「一般企業等での就労経験があり、離職された方」「就労移行支援事業所を利用したが、一般企業への就労に至らなかった方」「特別支援学校を卒業して就労活動を行ったが、企業等の雇用に結びつかなかった方」などが多く利用しています。しかし、これらの経験がなくても、自治体の判断で利用が認められる場合もあります。
なぜ就労支援B型を選ぶの?(メリットや目的)
なぜ多くの方が就労支援B型を選ぶのでしょうか。そのメリットや利用目的は様々です。
働くことへのハードルが低い
雇用契約を結ばないため、働く日数や時間、作業内容などに関して、比較的柔軟な対応が可能です。体調の波が大きい方や、長時間の作業が難しい方でも、自分のペースで無理なく通い、活動に参加できます。
生活リズムの安定
決まった時間に通所し、活動に参加することで、生活に規則正しいリズムが生まれます。これは、心身の健康維持や安定に非常に重要です。
作業能力や社会性の向上
担当職員のサポートを受けながら作業に取り組むことで、集中力や持続力、正確性といった作業スキルが向上します。また、他の利用者さんや職員との関わりを通じて、コミュニケーション能力や協調性といった社会性も身につけることができます。
社会参加の機会
自宅に引きこもりがちだった方も、事業所に通うことで社会との接点が生まれます。同じような悩みを持つ仲間との交流は、孤立感の解消や精神的な安定にも繋がります。
将来へのステップアップ
B型事業所での活動を通じて、体調やスキルが安定・向上すれば、就労継続支援A型や一般企業への就職を目指すことも可能です。B型事業所は、将来の就労に向けた準備段階としても機能します。もちろん、B型事業所を長期的に利用し続けることも可能です。
就労継続支援B型は、「すぐに働くのは難しいけれど、何らかの形で社会と繋がり、活動したい」「自分のペースで働く経験を積みたい」「生活リズムを整えたい」という方にとって、非常に重要な選択肢となります。
どこにあるの?どうやって探すの?
どこにあるの?
就労支援B型事業所は、全国各地に存在します。駅の近くにあったり、住宅街の中にあったり、郊外にあったりと立地は様々です。事業所ごとに施設の規模や雰囲気、得意とする作業内容も異なります。
どうやって探すの?
就労支援B型事業所を探すための主な方法は以下の通りです。
- お住まいの市区町村の障害福祉窓口に相談する: これが最も一般的で確実な方法です。お住まいの地域の事業所のリストをもらえたり、あなたの状況に合った事業所を紹介してもらえたりします。
- 相談支援事業所を利用する: 障害福祉サービスの利用計画作成などを行う事業所です。あなたの意向や状況を把握した上で、適切な事業所探しを手伝ってくれます。
- インターネットで検索する: 最近は事業所が独自のウェブサイトを持っていたり、事業所検索サイトがあったりします。ただし、情報が最新でなかったり、全ての事業所が掲載されているわけではなかったりすることもあります。
- 障害者就業・生活支援センターに相談する: 就職に関する相談や支援を行っている機関ですが、B型事業所に関する情報を持っている場合もあります。
気になる事業所が見つかったら、必ず見学や体験利用をすることをお勧めします。実際に雰囲気を肌で感じ、職員の方と話をすることで、自分に合っているかどうかを判断できます。
費用はいくらかかるの?お給料(工賃)はもらえるの?
利用するための費用は?
就労支援B型事業所の利用にかかる費用(利用者負担額)は、前年度の世帯収入によって決まります。多くの利用者の方は、以下の所得区分に該当するため、利用者負担がゼロ円となっています。
- 生活保護受給世帯
- 低所得(市町村民税非課税世帯)
ただし、市町村民税課税世帯であっても、負担には上限額が定められています(例:一般1が9,300円/月、一般2が37,200円/月)。詳細な負担額については、お住まいの市区町村の障害福祉窓口で確認が必要です。多くの場合は無料で利用できると考えて良いでしょう。
なお、作業中の食事代や交通費は、原則として自己負担となります(一部助成がある事業所もあります)。
お給料(工賃)はもらえるの?
就労支援B型事業所では、雇用契約を結ばないため、「給料」ではなく「工賃(こうちん)」という形で、作業への対価や成果に応じた金額が支払われます。
工賃は、作業内容や時間、事業所の運営状況によって大きく異なります。残念ながら、一般就労の賃金や最低賃金と比べると非常に低いのが現状です。
厚生労働省の調査によると、全国平均の月額工賃は1万円台後半です。これはあくまで平均であり、月に数千円の事業所もあれば、数万円になる事業所もあります。
工賃が低い理由は、B型事業所が収益を上げることを主目的とするのではなく、利用者の訓練や支援に重点を置いた福祉サービスであるためです。事業所の運営費の多くは公費で賄われており、生産活動による収入だけでは工賃を高く支払うことが難しい構造になっています。
工賃は少ないかもしれませんが、働くことへのモチベーションや、社会との繋がりを実感するための一助となります。
利用を開始するにはどうすればいいの?
利用開始までの流れ
就労支援B型事業所の利用を開始するためには、いくつかのステップがあります。
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市区町村の障害福祉窓口に相談
まずはお住まいの役所の障害福祉課など、関連する窓口に相談に行きましょう。
利用したいサービスの種類(就労継続支援B型)や、現在の状況、希望などを伝えます。 -
サービス利用の申請
窓口で相談後、障害福祉サービスの利用申請を行います。
申請時には、医師の診断書や障害者手帳(お持ちの場合)などが必要になることがあります。 -
アセスメント・サービス等利用計画案の作成依頼
市区町村の担当者や、指定された相談支援事業所の職員によるアセスメント(心身の状況や生活環境などの調査)が行われます。
その結果に基づき、「サービス等利用計画案」を作成します。これは、どのようなサービスを、どれくらいの頻度で利用したいかなどを記載する書類です。相談支援事業所が作成を代行してくれるのが一般的です。 -
事業所の選択・見学・体験利用
作成されたサービス等利用計画案や、相談支援事業所からの情報提供をもとに、利用したいB型事業所を選びます。
実際に事業所を見学したり、数日間作業を体験したりして、自分に合うかどうかを確認しましょう。複数の事業所を比較検討することをお勧めします。 -
個別支援計画の作成
利用する事業所を決定したら、その事業所のサービス管理責任者などと相談して、「個別支援計画」を作成します。
これは、具体的な支援目標や支援内容を定めた計画です。サービス等利用計画案を元に、より詳細な内容を詰めます。 -
サービス利用契約・支給決定
市区町村からサービスの支給決定通知を受け、サービス等受給者証が発行されます。
その後、利用する事業所と正式に利用契約を結びます。 -
利用開始
契約が完了すれば、いよいよ事業所への通所開始です。
このプロセスは、自治体や個人の状況によって多少異なる場合があります。わからないことや困ったことがあれば、遠慮なく市区町村の窓口や相談支援事業所に質問しましょう。
就労支援B型事業所は、働くことに困難を抱える方々にとって、自分らしいペースで社会と繋がり、活動できる大切な場所です。
この記事が、利用を検討されている方やそのご家族の疑問解消の一助となれば幸いです。