子ども子育て支援新制度とは? 何が変わったの?
子ども子育て支援新制度は、すべての子どもたちが健やかに育ち、子育て中の保護者が安心して子育てできる社会を目指して平成27年4月にスタートした新しい仕組みです。従来の幼稚園、保育所、認定こども園に加え、地域の子育て支援事業なども含めて、よりきめ細やかな支援を提供することを目的としています。
「新制度」という言葉を聞くと難しく感じるかもしれませんが、保護者の皆様にとって最も重要な変更点、そして日々の生活に直結する部分は、
「施設やサービスを利用する際に、お住まいの市区町村から『認定』を受ける必要がある」という点と、
「利用料金の仕組みが変わった」という点の二つです。
この制度は、単に施設を増やすだけでなく、子育て家庭の多様なニーズに応えるための質や量の拡充、そして誰もが分かりやすく利用しやすい仕組みの構築を目指しています。具体的な「何」を提供し、「どうやって」利用するのかを、ここから詳しく見ていきましょう。
新制度の「認定」とは? なぜ必要なの?
保育の必要性の認定(2号・3号認定)とは?
新制度では、幼稚園、保育所、認定こども園などの施設を利用する際に、利用する施設の種類や子どもの年齢、そして「保育を必要とする理由」に応じて、市区町村から「認定」を受ける必要があります。特に、保育所や認定こども園の「保育が必要な子ども」向けの枠(2号認定、3号認定)を利用したい場合に、この「保育の必要性の認定」が必須となります。
なぜこの認定が必要なのでしょうか? それは、限られた施設の受け入れ枠の中で、本当に保育が必要な家庭から優先的に利用できるよう、公平性を保つためです。また、自治体が地域の保育ニーズを正確に把握し、今後の整備計画に役立てるためでもあります。
認定区分
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1号認定:教育標準時間認定
子どもが満3歳以上で、教育(幼稚園での教育など)を希望する場合。保育の必要性の有無は問われません。 -
2号認定:満3歳以上で保育の必要性の認定
子どもが満3歳以上で、「保育を必要とする事由」に該当し、保育所や認定こども園などでの保育を希望する場合。 -
3号認定:満3歳未満で保育の必要性の認定
子どもが満3歳未満で、「保育を必要とする事由」に該当し、保育所や認定こども園、地域型保育事業などでの保育を希望する場合。
「保育を必要とする事由」とは? どのように証明するの?
2号認定または3号認定を受けるためには、以下のいずれかに該当し、それを証明する書類を提出する必要があります。
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就労: 保護者が月64時間以上就労している場合。
(例:会社員、自営業など。勤務証明書や就労状況申告書などを提出) -
妊娠・出産: 妊娠中または出産後間がない場合(原則として産前産後8週以内)。
(例:母子手帳の写しなどを提出) -
保護者の疾病・障害: 保護者が病気や怪我、心身の障害により保育が困難な場合。
(例:診断書、障害者手帳の写しなどを提出) -
同居親族等の介護・看護: 同居または長期入院している親族を介護・看護している場合。
(例:介護保険証、診断書などを提出) - 災害復旧: 震災、風水害、火災その他の災害の復旧にあたっている場合。
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求職活動: 求職活動(起業準備を含む)を継続的に行っている場合。
(注:利用期間に上限が設けられることがあります。ハローワークへの登録証明など) -
就学: 職業訓練校等における就学(月64時間以上)の場合。
(例:在学証明書、時間割などを提出) - 育児休業取得時に、既に保育を利用している子どもがいて継続利用が必要な場合。
- その他、上記に類する状態として市区町村が認める場合。
これらの事由に加え、就労の場合は「月の就労時間」によって、さらに「保育標準時間(最大11時間利用可能)」と「保育短時間(最大8時間利用可能)」に区分されます。一般的に、月の就労時間120時間以上が「保育標準時間」、64時間以上120時間未満が「保育短時間」となることが多いですが、基準は市区町村によって若干異なる場合があります。
認定は、子どもが施設を利用するための「チケット」のようなものです。この認定を受けて初めて、希望する施設への利用申込みが可能になります。
新制度で利用できる施設・サービスの種類は? どこで使えるの?
新制度の対象となる施設・サービスは多岐にわたります。主に以下の4つの類型に分けられます。
1. 認定こども園
幼稚園と保育所の機能や特徴をあわせ持った施設です。保護者の就労状況にかかわらず利用できます。
- 幼保連携型認定こども園: 幼稚園的機能と保育所的機能を一体的に持つ単一の施設。最も一般的な類型です。
- 幼稚園型認定こども園: 認可幼稚園が、保育が必要な子どものための保育時間や預かり保育などを行う。
- 保育所型認定こども園: 認可保育所が、保育が必要な子ども以外の子どもも受け入れ、教育的な機能も行う。
- 地方裁量型認定こども園: 待機児童が多い地域などで、幼稚園・保育所いずれの認可もない施設が認定こども園としての機能を果たす。
認定こども園は、0歳から就学前までの子どもを対象とし、教育と保育を一体的に提供します。地域の子育て支援の拠点としての役割も担います。
2. 認可保育所
保護者が仕事や病気などのため家庭で保育できない子ども(0歳から就学前まで)を、保護者に代わって保育する施設です。利用には「保育の必要性の認定(2号または3号)」が必要です。保育士の配置基準などが国で定められています。
3. 新制度に移行した幼稚園
学校教育法に基づき、満3歳から就学前の子どもに幼児教育を行う施設です。新制度に移行した幼稚園では、従来の教育時間の利用に加え、多くの園で「預かり保育」を提供しており、共働き家庭なども利用しやすくなっています。利用には原則として「1号認定」が必要です。
4. 地域型保育事業
0歳から2歳までの保育を必要とする子どもを対象とした、地域の身近な場所で提供される少人数の保育事業です。
- 家庭的保育(保育ママ): 自宅などで少人数(5人以下)を家庭的な雰囲気で保育。
- 小規模保育: 定員が6人以上19人以下の小規模な保育所。待機児童対策として都市部を中心に増えています。
- 事業所内保育: 会社の事業所の保育施設で、そこで働く従業員の子どもと地域の子どもを一緒に保育。
- 居宅訪問型保育: 障害や疾患などで集団での保育が難しい場合などに、保護者の自宅で1対1の保育を行う。
地域型保育事業は、卒園後(満3歳になった後)に連携施設(受け皿となる保育所や認定こども園)に進むことができる仕組みがあります。利用には「保育の必要性の認定(3号)」が必要です。
その他、新制度で位置づけられる子育て支援
上記の施設利用給付の対象ではありませんが、新制度では以下のような地域での子育て支援も拡充・推進されています。
- 地域子育て支援拠点事業: 子育て親子が集まる交流の場を提供し、相談や情報提供を行う(「子育てひろば」など)。
- 一時預かり事業: 保護者のパート就労や病気、冠婚葬祭などで一時的に家庭での保育が困難になった場合に子どもを預かる。
- 病児保育事業: 病気の子どもや回復期の子どもを預かる。
- ファミリー・サポート・センター事業: 子育ての援助を受けたい人(利用会員)と行いたい人(提供会員)が会員となり、育児の相互援助を行う。
これらの事業は、施設の利用とは別に、各市区町村や実施団体が提供しています。利用方法や料金はそれぞれ異なります。
新制度の施設利用にかかる費用は? どのくらい?
新制度の対象となる施設(認定こども園、保育所、新制度移行幼稚園、地域型保育事業)の「施設型給付」や「地域型保育給付」の対象となる部分の利用料は、お住まいの市区町村が決定します。
そして、その金額は
「保護者の市町村民税所得割課税額(前年度または前々年度の所得に基づいて計算)」
によって決まるのが原則です。
つまり、世帯の所得が高いほど保育料は高くなる傾向がありますが、国が定める上限額があり、それ以上の保育料を市区町村が設定することはできません。具体的な金額は、市区町村から配布される「保育料徴収基準額表」などで確認できます。
無償化について
令和元年10月からは、幼児教育・保育の無償化が実施されています。
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3歳から5歳までの子ども:
幼稚園、保育所、認定こども園などを利用する場合、利用料が原則として無償化されます。ただし、実費として徴収される費用(通園送迎費、食材料費、行事費など)は無償化の対象外です。食材料費については、年収360万円未満相当の世帯や、第3子以降の子どもは免除される場合があります。 -
0歳から2歳までの住民税非課税世帯の子ども:
保育所、認定こども園、地域型保育事業などを利用する場合、利用料が原則として無償化されます。
無償化の詳しい内容や対象範囲、手続きについては、お住まいの市区町村にご確認ください。無償化後も、利用には新制度上の「認定」を受ける必要があります。
多子世帯やひとり親世帯等への軽減措置
保育料には、多子世帯(子どもが複数いる世帯)への負担軽減措置があります。具体的には、小学校就学前の子どものうち、上から数えて第2子は半額、第3子以降は無償(0円)となるのが原則です。この数え方については、市区町村によって条件が異なる場合がありますが、新制度では所得に関わらず、小学校就学前の子どもを対象にカウントするよう広がっています。
また、ひとり親世帯や障害のある保護者がいる世帯などについても、所得に応じて保育料の軽減措置が設けられています。
新制度の施設を利用するには? どうすればいい?
新制度の施設(保育所、認定こども園、地域型保育事業)を利用するための一般的な手続きは、以下の通りです。
ステップ1:情報収集・相談
まずはお住まいの市区町村の担当窓口(保育課、子育て支援課など)やホームページで、利用可能な施設、申込みの時期、必要書類、保育料の基準など、詳しい情報を入手しましょう。地域の「子育て支援拠点」や「利用者支援事業」で相談することもできます。
ステップ2:施設の見学
希望する施設がいくつかある場合は、できるだけ見学に行きましょう。施設の雰囲気、保育内容、先生の様子などを直接見て、お子さんに合った場所を選ぶことが大切です。見学の予約が必要な場合が多いので、事前に施設に問い合わせましょう。
ステップ3:「保育の必要性の認定」の申請と利用申込み
必要書類(認定申請書、保育を必要とする事由を証明する書類 – 就労証明書、診断書など)を準備し、利用したい施設の申込みと同時に、または事前に、市区町村の担当窓口に提出します。申込み期間は自治体によって決まっています(特に4月入所は申込み期間が限られています)。
ステップ4:市区町村による利用調整・決定
申込み締め切り後、市区町村が提出された書類に基づいて「保育の必要性の認定」を行い、世帯の状況(保育の必要性の度合い、就労時間、きょうだいの有無など)や希望施設の状況(空き状況)などを考慮して、利用できる施設を決定します。申込み多数の場合は「利用調整(選考)」が行われます。
ステップ5:利用決定通知書の受け取りと入所準備
利用できる施設が決まると、市区町村から「保育利用承諾通知書」などが送られてきます。その後、内定した施設で面談や健康診断、重要事項説明などが行われ、入所準備を進めます。残念ながら保留となった場合は、二次募集の申込みや、待機児童として登録されるなどの対応となります。
新制度に移行した幼稚園の利用申込みについては、1号認定の申請は必要ですが、施設の空きがあれば比較的スムーズに入園できることが多いです。申込み手続きや時期は各幼稚園によって異なりますので、希望する園に直接お問い合わせください。
どこで相談したり、詳しい情報を得られるの?
新制度についてもっと知りたい、自分の場合はどうなるのか確認したい、といった疑問や相談は、まず以下の窓口に問い合わせるのが最も確実です。
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お住まいの市区町村の保育担当課、子育て支援課など
制度全般の説明、認定申請の手続き、保育料の計算、利用可能な施設の情報、空き状況、申込み状況など、最も包括的な情報が得られます。 -
地域の「地域子育て支援拠点事業」実施箇所(子育てひろばなど)
子育てに関する様々な相談に応じています。新制度についても一般的な情報提供や、他の親御さんとの情報交換ができる場合があります。 -
各施設(幼稚園、保育所、認定こども園、地域型保育事業所)
その施設ごとの教育・保育内容、雰囲気、見学の申込み、入園に向けた説明会などについて詳しく聞くことができます。新制度への移行状況や利用手続きについても確認しましょう。 -
「利用者支援事業」実施箇所
市区町村によっては、利用者の相談に応じ、情報の提供や利用できる施設等の紹介、利用申請の支援などを行う「利用者支援事業」を実施しています。具体的な支援内容や実施場所は、市区町村にご確認ください。
新制度は、すべての子どもたちが質の高い教育・保育を受けられる機会を確保し、子育て家庭の多様な働き方や状況に対応できるよう作られています。制度を理解し、お住まいの地域のサービスを上手に活用することで、より安心して子育てができるはずです。ご自身の状況に合わせて、まずは市区町村の窓口に相談してみることから始めてみましょう。