大相撲千秋楽(おおずもうせんしゅうらく)とは、文字通り大相撲本場所(ほんばしょ)の15日間の最終日を指します。15日間の長い戦いのクライマックスであり、その場所の全てが決まる、最も重要で最も盛り上がる一日です。単に最後の日というだけでなく、この日ならではの特別な出来事が数多く詰まっています。
大相撲千秋楽では何が行われるのか?
千秋楽には、15日間の総決算として、様々な重要な出来事が集中します。
全ての取組の実施
幕下以下の階級から、十両(じゅうりょう)、そして最高峰の幕内(まくうち)まで、その場所の最後の取組が行われます。特に幕内の終盤の取組は、場所の優勝や三賞、力士の翌場所の番付に関わるため、非常に緊張感が高まります。
優勝力士の決定
千秋楽の最大の焦点は、その場所の幕内最高優勝(ゆうしょう)力士が決定することです。15日間で最も多く勝利を挙げた力士が優勝となります。
- 単独トップの場合:最終日の取組を終えた時点で、他の力士よりも勝利数が多ければ、その力士が優勝です。
- 複数力士が同点の場合:もし複数力士が最高勝利数で並んだ場合、優勝決定戦(ゆうしょうけっていせん)が行われます。これは正規の取組終了後に行われるプレイオフのようなもので、一発勝負で真の優勝者を決めます。同点者が2人の場合は直接対決、3人以上の場合は巴戦(ともえせん)という方式で行われます。優勝決定戦は、千秋楽でしか見られない非常にドラマチックな瞬間です。
三賞(さんしょう)の発表と授与
幕内力士を対象とした三賞(敢闘賞、殊勲賞、技能賞)も、原則として千秋楽の取組終了後に決定し、表彰が行われます。
- 敢闘賞(かんとうしょう):特に内容が良かったり、勝ち越しを大きく超える星を挙げたりした力士に贈られます。
- 殊勲賞(しゅくんしょう):横綱や大関といった上位陣に勝利するなど、特に優れた成績を挙げた力士に贈られます。
- 技能賞(ぎのうしょう):様々な技を駆使するなど、相撲内容が特に優れていた力士に贈られます。
これらの受賞は、力士の栄誉であり、翌場所の番付にも影響を与える重要な評価です。選考委員会が千秋楽の取組を見終えてから最終的に決定します。
閉めの儀式と表彰式
全ての取組と優勝決定戦が終わった後、盛大な閉めと表彰式が行われます。
- 弓取式(ゆみとりしき):幕内最後の取組が終わった後、行司の装束を着た下位の力士(弓取力士)が土俵上で弓を振るう儀式です。これは天下泰平、五穀豊穣を祈り、場所の結びを飾る伝統的な儀式です。
- 表彰式:内閣総理大臣杯、天皇賜杯などが優勝力士に授与される他、各界からの寄贈品なども手渡されます。この時、賜杯を抱え、土俵上で記念撮影をする優勝力士の姿は、その場所を象徴する光景となります。三賞受賞者への表彰もこの中で行われます。
- 協会挨拶:日本相撲協会理事長が場所を締めくくる挨拶を行います。
大相撲千秋楽はどこで、いつ行われるのか?
大相撲の本場所は年間に6回開催され、それぞれ開催地と開催月が決まっています。千秋楽は、各本場所の15日目に必ず行われます。
開催地と開催月
- 1月場所:東京都両国国技館(りょうごくこくぎかん)
- 3月場所:大阪府エディオンアリーナ大阪(大阪府立体育会館)
- 5月場所:東京都両国国技館
- 7月場所:愛知県ドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)
- 9月場所:東京都両国国技館
- 11月場所:福岡県福岡国際センター
したがって、千秋楽はこれらのいずれかの会場で、それぞれの場所の開始日から数えて15日目に行われることになります。
一日の中での進行
千秋楽の一日は、朝早くから下位の力士の取組が始まります。しかし、幕内力士の取組は通常、夕方頃から始まります。そして、優勝や三賞に関わる大一番が組まれる終盤の取組は、さらに時間が遅くなり、最も盛り上がる時間帯となります。表彰式や弓取式といった閉めの儀式は、全ての取組が終わった後、夕方から夜にかけて行われます。
なぜ千秋楽は特別なのか?
千秋楽がこれほどまでに注目され、特別視される理由は、全ての決着がつく日だからです。
- 優勝の行方:14日間戦った力士たちの努力が実るかどうかがこの日決まります。複数力士に優勝の可能性がある場合、その緊張感は最高潮に達します。
- 昇進・降格に関わる最後の戦い:力士は15日間の成績によって、翌場所の番付が決まります。特に千秋楽の取組は、勝ち越し(かちこし:8勝以上)や負け越し(まけこし:7勝以下)が決まる瀬戸際の力士にとって、文字通り運命を分ける一番となります。このため、普段の取組とは比べ物にならないほどの重圧と気迫が生まれます。
- 感動とドラマ:15日間の長い場所を戦い抜いた力士たちの姿、優勝を決めた瞬間の歓喜、惜しくも優勝を逃した力士の悔しさ、三賞を受賞した力士の喜びなど、様々な感情が交錯する人間ドラマが凝縮されています。
- 独特の雰囲気:場所を締めくくるお祭り的な要素と、全てが決まる張り詰めた空気が混ざり合い、他の日では味わえない独特の高揚感に包まれます。観客の声援も一層熱を帯びます。
千秋楽を観戦するには?チケットはどれくらい?
千秋楽は場所全体の中でも最も人気が高く、チケットは非常に手に入りにくいことで知られています。
- チケットの入手方法:日本相撲協会の公式サイトや、各種プレイガイドを通じて事前に購入するのが一般的です。しかし、千秋楽のチケットは発売と同時に売り切れてしまうことがほとんどです。早めの準備が必須となります。
- チケット価格:席の種類(土俵に近い枡席、椅子席など)や会場によって異なりますが、安い席で数千円から、土俵に近い良い席では一人あたり1万円~2万円、人気の枡席(4人マスなど)では数万円以上となるのが一般的です。千秋楽は通常、他の日よりも若干価格設定が高い傾向にあります。
- 当日券:ごくわずかながら当日券が販売される場合もありますが、千秋楽は早朝から長蛇の列ができ、入手は非常に困難です。
直接会場で観戦できなくとも、NHKなどのテレビ放送で幕内の取組から閉めの儀式までを生中継で見ることができます。テレビ観戦でも十分に千秋楽の熱気とドラマを感じ取ることができるでしょう。
まとめ
大相撲千秋楽は、15日間の本場所の集大成であり、優勝決定、三賞決定、そして翌場所の番付を左右する最後の戦いが行われる、一年を通して最も重要な相撲イベントの一つです。両国国技館をはじめとする各会場で、毎年1月、3月、5月、7月、9月、11月の最終日曜日に開催されます。優勝決定戦や三賞の行方、力士たちの昇降格をかけた最後の意地など、見どころは尽きません。チケット入手は困難ですが、直接観戦するにせよ、テレビなどで視聴するにせよ、この特別な一日を体験することで、相撲の魅力と奥深さをより深く感じることができるでしょう。千秋楽にしか味わえない、感動と興奮のドラマがそこにはあります。