大相撲の本場所が終わり、次の場所に向けてファンが最も楽しみにするものの一つに「番付」の発表があります。しかし、公式発表の前に様々な媒体や個人から公表される「予想番付」もまた、大きな話題となります。この「予想番付」とは一体どのようなもので、どのように作られ、なぜ注目されるのでしょうか? 公式発表を待ちきれない相撲ファンにとって必見の、その詳細に迫ります。

大相撲予想番付とは? 公式発表前の格付け予測

予想番付(よそうばんづけ)とは、日本相撲協会が公式に発表する次の本場所の番付表に先立って、
前場所の成績や休場状況などを基に、各力士の階級(番付)がどのように変動するかを予測した、いわば「非公式」の格付け表です。これはあくまで予測であり、公式なものではありませんが、相撲に詳しい識者や熱心なファンの間で作成され、公開されています。

公式番付は通常、場所終了から約3週間後に発表されます。その間の空白期間に、ファンはこの予想番付を見て、次の場所で自分の応援する力士がどの地位につくのか、誰と対戦しそうかなど、様々な期待を膨らませるのです。

なぜ予想番付が注目されるのか?

予想番付がこれほどまでに多くの相撲ファンに支持されるのには、いくつかの理由があります。

  • 次の場所への期待感の醸成: 予想番付を見ることで、次の場所の展望が開けます。誰が昇進し、誰が陥落するのか、幕内や十両の顔ぶれはどう変わるのかなど、様々な予測が次の場所への興味を高めます。
  • 番付編成ルールの理解促進: 予想番付がどのように作られるかを知ることは、相撲協会の番付編成会議でどのような要素が考慮されるのかを理解する手助けになります。単に「勝ち越せば上がる、負け越せば下がる」だけでなく、その幅や他の力士との兼ね合いなど、複雑な要素があることが分かります。
  • 識者やファン同士の議論の活性化: 予想番付は、しばしば識者の間でも意見が分かれます。特定の力士の昇降や、微妙なライン上の力士の扱いなどについて、様々な予想が飛び交い、それについてファン同士が語り合うことで、コミュニティが盛り上がります。
  • 自身の予測との比較: 熱心なファンの中には、自分自身で予想番付を作成する人も少なくありません。公表されている予想番付と自分の予測を比較し、その精度を競い合うことも楽しみの一つです。

このように、予想番付は単なる予測に留まらず、相撲の深い理解とファン同士の交流を促進するツールとして機能しています。

予想番付は誰が、どこで発表しているのか?

予想番付は、様々な媒体や個人から公表されています。主な入手先は以下の通りです。

  • 相撲専門誌: 『相撲』や『大相撲ジャーナル』といった専門誌は、場所が終了すると次号で詳細な予想番付を掲載することが多いです。長年の取材経験に基づく、信頼性の高い情報源とされることが多いです。
  • 新聞社・通信社: スポーツ担当の記者やデスクが、過去の番付編成傾向や力士の成績を分析して作成し、記事として掲載することがあります。
  • スポーツ関連ウェブサイト: 大手スポーツメディアや相撲情報に特化したウェブサイトでも、独自に予想番付を公開していることがあります。
  • 個人ブログやSNS: 熱心な相撲ファンや、相撲に詳しいとされる個人が、自身のブログやX(旧Twitter)などのSNSで予想番付を公開することもあります。中には非常に精度が高いと評判になるものもありますが、情報の信頼性には個人差があります。

これらの情報源によって、予想のスタイルや詳細さ、公開タイミングは異なります。複数の予想を見比べてみるのも面白いでしょう。

予想番付はどのように作成されるのか? その基本的な考え方

予想番付の作成には、明確な公式ルールがあるわけではありません。しかし、過去の番付編成の傾向から導き出される、いくつかの基本的な原則に基づいています。作成者は、前場所の全取組結果と力士の休場状況を詳細に分析し、これらの原則を当てはめて次の番付を推測します。

最も重要な要素は、言うまでもなく前場所の勝敗成績です。

勝ち越し(勝ち星が負け星より多い)の場合

基本的に番付は上がります。ただし、その上がり幅は以下の要素によって左右されます。

  • 勝ち星の数: 勝ち星が多いほど、上がり幅は大きくなる傾向があります。特に二桁勝利(10勝以上)は大きな評価につながります。
  • 番付: 同じ勝ち星でも、下位の力士ほど大きく上がりやすい傾向があります。上位(三役や平幕上位)で勝ち越すことは難しいため、相対的に評価が高まります。
  • 対戦相手: 上位力士(横綱、大関、関脇、小結、平幕上位)に勝つことは、昇進において非常に有利に働きます。特に横綱に平幕が勝つ「金星」は、勝ち越しと合わせて大きな評価となります。
  • 同成績の力士との比較: 同じ階級や近い階級で同じ勝ち星の力士が複数いる場合、前場所の番付が高かった力士の方が有利とされることが多いです。

負け越し(負け星が勝ち星より多い)の場合

基本的に番付は下がります。下がり幅は以下の要素によります。

  • 負け星の数: 負け星が多いほど、下がり幅は大きくなります。特に二桁敗退(5勝10敗以下など)は大きく番付を下げる要因となります。
  • 番付: 上位で負け越すほど、下がり幅は大きくなる傾向があります。特に大関が負け越して角番となる、または陥落するといったケースは、予想の大きな焦点となります。
  • 対戦相手: 下位の力士に負けることは、番付下降において不利に働きます。

休場(全休または途中休場)の場合

怪我などで全休したり、途中から休場した場合は、基本的に大きく番付が下がります。全休した場合は、その階級や休場期間によって十両から幕下へ、幕下から三段目へ、といった大きな陥落もあり得ます。途中休場の場合は、その時点での成績や休場した日数によって下がり幅が変わります。

予想が特に難しいケース:特例や微妙な判断

上記の基本原則だけでは判断が難しく、予想者の腕の見せ所となるケースも多くあります。

  • 三役(関脇・小結)昇進ライン: 平幕から関脇・小結への昇進には、勝ち越しはもちろんですが、何勝すれば確実、といった絶対的な基準はありません。過去の例から「10勝以上なら有力」「11勝ならほぼ確実」といった目安はありますが、同場所の他の力士の成績や、上位力士の変動状況にも左右されるため、予想が分かれるポイントです。特に小結は定員が少ないため、狭き門となります。
  • 大関昇進・陥落・特例復帰: 大関昇進には「三役で直近三場所合計33勝以上」が目安とされますが、これもあくまで目安であり、内容(横綱・大関からの勝ち星など)も重視されます。また、大関から陥落した力士が次の場所で10勝以上すれば特例で大関に復帰できますが、これも予想の大きな要素です。
  • 十両・幕下入れ替え: 幕下の上位から十両への昇進、あるいは十両から幕下への陥落は、通常「幕下15枚目格付け出し」など特殊なケースを除き、勝ち越し・負け越しが大きく影響します。しかし、定員(十両28名)が決まっている中で、幕下上位の複数の力士が好成績を収めた場合や、十両下位の複数の力士が負け越した場合など、誰が昇進し、誰が陥落するかは非常に予想が難しくなります。特に幕下15枚目以内で大きく勝ち越した力士は昇進候補となりますが、その人数と十両からの陥落人数との兼ね合いが重要です。
  • 同成績での番付順: 同じ階級で同じ勝敗数の力士が複数いる場合、公式番付では前場所の番付が高かった順に並ぶのが原則ですが、微調整が入ることもあり、細かい順位の予想はさらに難しくなります。
  • 長期休場からの復帰: 全休などで番付を大きく下げた力士が、復帰場所でどの地位に格付けされるかも、単純なルールでは割り切れない場合があります。

これらの複雑な要素や過去の慣例を考慮し、それぞれの予想者が独自の分析に基づいて番付を組んでいきます。

予想番付の読み方:どこに注目すべきか?

公表された予想番付を見る際は、以下の点に注目するとより楽しめます。

  1. 大きな昇降: 特に三役(関脇・小結)への昇進、あるいは平幕上位への躍進、十両への昇進といった、大きな番付アップを果たしそうな力士に注目しましょう。逆に、大きく番付を下げそうな力士(特に負け越しの多かった上位力士や休場明けの力士)も要チェックです。
  2. 微妙なライン上の力士: 勝ち越し/負け越しが8勝7敗/7勝8敗だった力士や、幕下上位で勝ち越した力士など、昇降するかどうかの「瀬戸際」にいる力士の扱いは、予想者によって意見が分かれるポイントです。ここをどう予想しているかを見ると、その予想者の傾向や分析の深さが分かります。
  3. 同成績力士の順位: 同じ階級で同じ勝ち星の力士が複数いる場合、彼らがどのような順で並べられているかにも注目してみましょう。これはより細かい予想の精度を示します。
  4. 複数の予想の比較: 可能であれば、異なる媒体や個人が発表している複数の予想番付を見比べてみてください。特に意見が分かれている箇所は、公式発表で最も注目すべきポイントとなります。

結局、予想番付は「非公式」の楽しみ

予想番付は、あくまで相撲ファンや識者による「予測」です。公式なものではなく、的中を保証するものでもありません。
しかし、次の場所への期待感を高め、番付編成の面白さを教えてくれる、相撲観戦の奥深い楽しみ方の一つと言えるでしょう。
公式番付発表までのワクワクする時間を、予想番付とともに過ごしてみてはいかがでしょうか。
そして、公式発表で「予想通りだった!」「ここは外れたか!」と一喜一憂するのも、また相撲の醍醐味です。

大相撲予想番付

By admin

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