運転免許証は、自動車やバイクなどを運転する際に、その資格を有することを証明する最も重要な書類です。道路交通法では、運転する際には常にこの免許証を携帯することが義務付けられています。もし携帯せずに運転した場合、それは「免許不携帯」という交通違反にあたります。しかし、「免許不携帯」に対して「点数」が付くのか、どのような罰則があるのか、具体的に知らない方も多いのではないでしょうか。ここでは、免許不携帯に関する様々な疑問について、詳しく解説していきます。
免許不携帯とは何ですか?
「免許不携帯」とは、日本の道路交通法において定められている交通違反の一つです。
これは、自動車や原動機付自転車などを運転する際に、有効な運転免許証をその身に携帯していない状態を指します。
具体的には、免許証を自宅に忘れた、財布ごと置き忘れた、紛失したなど、運転時に手元に免許証がないあらゆる状況が含まれます。
「有効な」運転免許証であることが重要で、例えば有効期限が切れている免許証を持っていても、それは免許不携帯とは別の、さらに重い違反(無免許運転)にあたる可能性があります。免許不携帯はあくまで「有効な免許を持っているが、たまたま携帯していない」場合の違反です。
なぜ免許証の携帯が義務付けられているのですか?
運転免許証の携帯が義務付けられている理由はいくつかあります。
- 運転資格の確認: 警察官が交通取り締まりや職務質問を行う際に、運転者が法的に運転する資格(免許)を有しているか、またその免許が運転している車両の種類に対応しているかなどを、その場で迅速に確認するためです。
- 本人確認: 交通違反を起こした場合や、事故に遭遇した場合などに、運転者の身元を特定するために必要となります。
- 交通安全の維持: 有資格者のみが運転していることを確認することで、交通秩序と安全が保たれます。
免許証を携帯していれば、これらの確認がスムーズに行われ、万が一の事態にも迅速に対応できます。
免許不携帯はどのような違反にあたり、どこで摘発されますか?
免許不携帯は、道路交通法第95条で定められている義務違反です。
(免許証の携帯及び提示義務)
第九十五条 免許を受けた者は、自動車等を運転するときは、この法律の規定により当該自動車等に係る免許を受けなければならないこととされている者であるかどうかにかかわらず、当該免許証を携帯していなければならない。
(第2項省略 – 提示義務について)
この違反は、比較的軽微な部類に位置付けられており、「反則行為」として処理されることが一般的です。つまり、刑事罰の対象ではなく、反則金を納付することで事件が終了する手続き(交通反則通告制度)が適用されます。
摘発される場所は様々ですが、主な状況は以下の通りです。
- 交通検問・職務質問: 警察官が定点で検問を行っている場合や、運転中に停止を求められ職務質問を受けた際に、免許証の提示を求められたにもかかわらず、提示できない場合。
- 他の交通違反の取締り時: スピード違反、信号無視など、別の交通違反で警察官に停止を求められた際に、併せて免許証の提示を求められ、携帯していないことが判明した場合。
- 交通事故発生時: 事故現場で警察官による事情聴取や現場検証が行われる際に、免許証の提示を求められた場合。
このように、運転中に警察官と接触するあらゆる場面で、免許不携帯が発覚する可能性があります。
免許不携帯による罰則・罰金・点数はどれくらいですか?
免許不携帯に対する罰則は、多くの方が気にされる「点数」と「罰金(反則金)」に分けられます。
【違反点数について】
結論から言うと、免許不携帯自体には、一般的な交通違反に課される違反点数(累積点数に加算される点数)は付されません。
これは、免許不携帯が物的な損害を与えたり、直接的に危険な運転行為ではないため、交通の安全に対する危険度が高い違反とは位置付けられていないからです。
したがって、「免許不携帯によって〇点減点される」「免許不携帯で累積点数が加算され、免許停止に近づく」といった心配は基本的にありません。
重要な注意点:
免許不携帯単独では点数は付されませんが、もし免許不携帯が発覚した原因が別の交通違反(例:スピード違反や一時不停止など)であった場合、その「別の交通違反」に対する違反点数は別途加算されます。免許不携帯になったからといって、他の違反の点数が免除されるわけではありません。
【罰金(反則金)について】
免許不携帯は、違反点数は付かないものの、反則金が課されます。
反則金の額は、政令で定められており、3,000円です。
警察官に免許不携帯で摘発された場合、その場で反則告知書(青切符と呼ばれることもあります)を渡され、後日、金融機関で反則金を納付することになります。この反則金を納付すれば、刑事手続きに進むことなく違反処理は終了します。
もし反則金の納付を拒否したり、指定された期間内に納付しなかったりした場合は、反則行為ではなく正式な交通違反事件として扱われ、検察庁に送致される可能性があり、その場合は刑事罰(2万円以下の罰金または科料)の対象となることがあります。しかし、通常は素直に反則金を納付すれば問題ありません。
まとめると:
- 点数: 0点(累積点数には影響しない)
- 罰金: 3,000円(反則金)
これが、免許不携帯単独での最も一般的な罰則です。
免許不携帯の違反はどのように処理されますか?
警察官に免許不携帯で停止を求められた場合の一般的な流れは以下のようになります。
- 停止・職務質問: 警察官が運転中の車両に対し、停止を求め、運転者に免許証の提示を要求します。
- 免許証の不提示: 運転者が免許証を携帯していないため、提示できません。その場で、氏名、住所、生年月日などを告げ、警察官が無線等で免許情報の照会を行います(有効な免許を所持しているかの確認)。
- 違反の確定・告知: 有効な免許を所持していることが確認できた上で、免許不携帯の事実が確認されると、違反が確定します。警察官から免許不携帯である旨が告げられ、反則告知書(青切符)が交付されます。
- 反則金の納付: 交付された反則告知書に基づき、指定された期間内に金融機関で反則金を納付します。
- 手続き完了: 反則金の納付をもって、違反に関する手続きは完了となり、刑事罰の対象とはなりません。
免許証を携帯していないことで、その場での本人確認や免許情報の照会に時間がかかり、通常の交通違反の取締りよりも時間がかかる場合があります。
免許不携帯の違反を避けるためにはどうすれば良いですか?
免許不携帯の違反を避ける方法は非常にシンプルです。
それは、運転する際は常に、そして確実に運転免許証を携帯することです。
具体的な対策としては:
- 車のキーやバイクのキーとセットにしておく。
- 常に持ち歩く財布やバッグに必ず入れておく。
- 運転する前に、免許証があるか指差し確認するなど、携帯を習慣化する。
「ちょっとそこまでだから大丈夫だろう」といった油断が、免許不携帯で摘発される原因となります。距離や時間に関わらず、公道で車両を運転する場合は、必ず免許証を携帯しましょう。
免許証を紛失した場合や、更新手続き中の場合はどうなりますか?
免許証を「持っていない」状況には、いくつかのケースが考えられます。
【免許証を紛失・盗難された場合】
この場合は、まず速やかに最寄りの警察署に届け出を行い、再交付申請の手続きを行う必要があります。紛失・盗難の届け出をしていれば、運転免許情報自体は警察で確認できますが、物理的な免許証がない以上、運転時には免許不携帯の状態となります。再交付されるまでの間は、運転を控えるのが最も安全です。やむを得ず運転する場合に摘発された場合は、免許不携帯として扱われる可能性がありますが、紛失届を出しているなどの状況は考慮される場合もあります(ただし違反が免除されるわけではありません)。
【免許証の更新手続き中の場合】
免許証の更新手続きを行うと、一時的に古い免許証に穴が開けられたり、新しい免許証が後日郵送になったりする場合があります。この場合、多くの運転免許センター等では、手続きが完了した証明として仮運転免許証や運転免許証更新申請中証明書などが交付されます。これを携帯していれば、多くの場合、免許不携帯としては扱われません。ただし、証明書の種類や効力については、交付時にしっかりと確認し、運転時は必ず本免許証の代わりとして携帯する必要があります。新しい本免許証が手元に届いたら、速やかにそちらに切り替えましょう。
まとめ
「免許不携帯」は、違反点数は付かないものの、3,000円の反則金が課される交通違反です。運転資格を持っていることの証明は、運転者の最低限の義務であり、交通安全のためにも非常に重要です。免許証を携帯していないことで、警察官による確認に余計な時間がかかったり、いざという時に身分証明に困ったりすることもあります。
たった数千円の反則金と0点という比較的軽い罰則だからといって軽視せず、運転する際は必ず運転免許証を携帯する習慣をつけましょう。これが、免許不携帯による不必要なトラブルや罰則を避けるための最も確実な方法です。