【介護保険課】とは? なぜそこに行く必要があるの? どこにある? 費用は? サービス利用の手続きは?
「介護保険課」という言葉を聞いたことがあるけれど、具体的に何をしている部署なのか、自分が関係することがあるのか、よく分からないと感じている方もいらっしゃるかもしれません。
ここでは、介護保険課がどのような役割を担っているのか、なぜ住民がこの課と関わる必要があるのか、そして具体的な手続きや費用について、分かりやすく解説します。
複雑に思える介護保険制度も、市区町村の窓口である介護保険課の役割を知ることで、ぐっと身近に感じられるはずです。
介護保険課は何をしている部署ですか?(What)
介護保険課は、日本の市区町村(市、区、町、村)の役所に設置されている部署の一つです。その名前の通り、介護保険制度の運営に関する様々な業務を行っています。具体的には、以下のような役割を担っています。
- 介護保険の加入手続き・管理: 住民が介護保険に加入する手続きや、被保険者情報の管理を行います。
- 保険料の徴収: 介護保険の保険料を住民から集める業務を行います(納付方法の案内や相談対応も含む)。
- 要介護認定の申請受付・手続き: 介護サービスを利用するために必要な「要介護認定」や「要支援認定」の申請を受け付け、認定調査の手配や結果の通知を行います。
- 介護サービスに関する相談・案内: どのような介護サービスがあるのか、どのように利用できるのかといった相談に応じ、情報提供や適切な窓口(地域包括支援センターや居宅介護支援事業所など)への案内を行います。
- 介護サービス費用の支給: 利用者が支払った介護サービスの費用の一部(自己負担分を除く)を、事業者を通じて支給する手続きを行います。
- 地域支援事業の実施: 高齢者が住み慣れた地域で自立した生活を送れるようにするための、介護予防や生活支援などの事業(地域支援事業)を企画・実施します。
- 事業者の指導・監査: 市町村内の指定介護サービス事業者に対する指導や監査を行います。
簡単に言えば、介護保険課は、住民が介護保険制度を利用するための「入り口」であり、制度全体を地域で適切に機能させるための「要」となる部署です。
なぜ介護保険課に行く必要があるのですか?(Why)
住民が介護保険課に行く必要が生じるのは、主に以下のような状況です。
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自分や家族が介護サービスを利用したいと考えたとき:
介護保険制度を利用して訪問介護(ホームヘルプ)や通所介護(デイサービス)などのサービスを受けたい、または施設に入所したいといった場合、まずは介護保険課に「要介護認定」または「要支援認定」の申請を行う必要があります。この申請手続きは、原則として介護保険課の窓口で行います。
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介護保険料について相談したいとき:
介護保険料の金額や納付方法について分からないことがある場合、または保険料の納付が困難になった場合などに、介護保険課に相談することができます。
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介護保険制度全般について知りたいとき、相談したいとき:
介護保険制度の仕組み、受けられるサービスの種類、費用負担などについて詳しく知りたい場合や、誰に相談すれば良いか分からない場合など、介護保険課で基本的な情報提供や相談対応を受けることができます。地域包括支援センターへの案内なども行われます。
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住所変更や氏名変更などの手続き:
市区町村内で引っ越しをした場合など、介護保険被保険者証の記載事項に変更があった場合にも、手続きが必要となることがあります。
つまり、介護や高齢者の生活支援に関する公的なサポートが必要になった際に、最初に行政の窓口として訪れるべき場所の一つが介護保険課なのです。
介護保険課はどこにありますか? 連絡先は?(Where)
介護保険課は、お住まいの市区町村の役所(市役所、区役所、町役場、村役場)の中に設置されています。
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場所の確認方法:
役所の本庁舎内にあるのが一般的ですが、大きな市では支所などに分かれている場合もあります。正確な場所や窓口の番号は、役所の公式サイトで確認するか、役所の代表電話に問い合わせるのが最も確実です。「〇〇市役所 介護保険課 場所」などのキーワードで検索したり、代表電話にかけて「介護保険課につないでください」とお願いしたりすれば、案内してもらえます。
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連絡先:
電話番号も、役所の公式サイトの組織一覧などで確認できます。相談内容によっては、事前に電話で予約が必要な場合や、担当者が異なる場合もあるため、訪問する前に一度電話で問い合わせてみることをお勧めします。
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開庁時間:
多くの役所と同様に、平日の日中(概ね午前8時30分~午後5時15分頃)が開庁時間となります。土日祝日や年末年始は閉まっていることがほとんどです。
遠方にお住まいのご家族の介護について相談したい場合は、そのご家族がお住まいの市区町村の介護保険課に問い合わせる必要があります。
介護保険に関わる費用はどれくらいかかりますか?(How much)
介護保険に関わる費用は、主に以下の二つがあります。
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介護保険料(被保険者として支払う費用):
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65歳以上の方(第1号被保険者):
保険料額は、お住まいの市区町村や本人の所得、世帯の課税状況によって異なります。各市区町村が3年ごとに「介護保険事業計画」を策定する際に基準額を定め、それを基に段階別に設定します。年間数万円から数十万円と幅があります。原則として、年金の受給額が多い方は年金からの天引き(特別徴収)で、それ以外の方は納付書や口座振替(普通徴収)で納めます。 -
40歳から64歳までの方(第2号被保険者):
加入している医療保険(健康保険組合、協会けんぽ、国民健康保険など)の保険料に上乗せされて徴収されます。保険料額は、加入している医療保険の種類や所得などによって異なります。
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65歳以上の方(第1号被保険者):
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介護サービスを利用した際の自己負担分:
- 介護サービスを利用した際に、かかった費用の一定割合を利用者が自己負担として支払います。
- 自己負担割合: 所得に応じて、1割、2割、または3割となります。負担割合は、市区町村から送られてくる「介護保険負担割合証」で確認できます。
- 支給限度額: 要介護(要支援)の認定区分ごとに、1ヶ月に保険から給付される上限額(区分支給限度額)が決められています。この上限額の範囲内でサービスを利用した場合、自己負担割合に応じた費用を支払います。上限額を超えてサービスを利用した場合は、その超えた分の費用は全額自己負担となります。例えば、要介護1の方の1ヶ月の支給限度額は約16万7千円(2021年時点)なので、この範囲でサービスを利用した場合、自己負担1割なら約1万6千7百円、2割なら約3万3千4百円を支払います。
- 高額介護サービス費: 同じ月に利用した介護サービスの自己負担額の合計が、所得に応じた上限額(月額)を超えた場合、超えた分が高額介護サービス費として払い戻される制度があります。これにより、毎月の負担額が過度に大きくならないようになっています。申請手続きが必要な場合があります。
これらの費用に関する具体的な金額や制度の詳細についても、介護保険課や地域包括支援センターで相談することができます。
介護サービスを利用するにはどうすれば良いですか?(How to use)
介護サービスを利用するまでの主な流れは以下の通りです。介護保険課が窓口となる手続きが含まれます。
1. 介護保険課への申請
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まず、お住まいの市区町村の介護保険課の窓口で、「要介護認定」または「要支援認定」の申請を行います。申請は本人や家族が行うことができますが、地域包括支援センターや指定居宅介護支援事業所、介護保険施設などに代行してもらうことも可能です。
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申請時には、介護保険被保険者証(65歳以上の方に交付されています)が必要です。40歳から64歳までの方は、加入している医療保険の被保険者証も必要になります。
2. 認定調査と主治医意見書
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申請後、市区町村の職員などがご自宅などを訪問し、心身の状態や日中の生活、家族の状況などに関する「認定調査」を行います。
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同時に、市区町村から申請書に記載された「主治医」(かかりつけ医)に、心身の状況についての「主治医意見書」の作成を依頼します。
3. 審査・判定
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認定調査の結果と主治医意見書を基に、介護認定審査会(保健・医療・福祉の専門家で構成される合議体)が、どれくらいの介護が必要か(または支援が必要か)を審査・判定します。
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この審査結果に基づいて、市区町村が要介護度(要支援1~2、要介護1~5、非該当)を認定します。
4. 結果通知
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認定結果が記載された通知書と、認定結果に応じた新しい介護保険被保険者証(要介護度などが記載されています)が、申請者宛てに郵送されます。申請から通知までは通常30日以内に行われますが、状況によっては遅れることもあります。
5. ケアプランの作成
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要支援1または2と認定された方、あるいは非該当だが介護予防サービスを利用したい方などは、お住まいの地域を担当する地域包括支援センターに相談し、介護予防ケアプランを作成してもらいます。
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要介護1~5と認定された方は、居宅介護支援事業所を選び、そこに所属するケアマネジャー(介護支援専門員)に相談し、利用者の状況や希望に沿ったケアプランを作成してもらいます。施設入所の場合は、その施設のケアマネジャーが作成します。
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ケアプランは、どのようなサービスを、いつ、どの事業所から利用するかなどを具体的に定めた計画です。ケアマネジャーへの相談やケアプラン作成の費用は、原則として全額保険給付となるため、利用者の自己負担はありません。
6. サービスの利用開始
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作成されたケアプランに基づき、サービス提供事業者(訪問介護事業所、通所介護事業所など)と契約を結び、サービスの利用を開始します。
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サービスを利用した際は、利用料のうち自己負担割合に応じた金額を事業者に直接支払います。保険給付分は、事業者が国民健康保険団体連合会などを通じて市町村に請求します。
これらの各段階において、手続きの進捗状況の確認や、制度に関する疑問、ケアマネジャーの選び方など、分からないことがあれば、まずは介護保険課に相談してみるのが良いでしょう。特に、最初の申請段階は介護保険課が直接対応する業務です。
その他、介護保険課で相談できることは?(How else)
上記の手続き以外にも、介護保険課では以下のような相談や手続きに対応しています。
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介護保険被保険者証の再交付:
被保険者証を紛失したり汚損したりした場合に、再交付の申請ができます。 -
住所変更・氏名変更などの届出:
市区町村外へ転出する場合や、氏名が変わった場合などに届出が必要です。 -
福祉用具購入費・住宅改修費の支給申請:
入浴補助用具などの特定福祉用具の購入や、手すりの設置、段差解消などの住宅改修を行った際に、費用の一定割合の払い戻しを受けるための申請窓口となります。事前に介護保険課やケアマネジャーへの相談が必要な場合が多いです。 -
サービス内容や事業所に関する苦情・相談:
利用している介護サービスの内容や、担当の事業所に対して疑問や苦情がある場合、介護保険課(または国民健康保険団体連合会)に相談することができます。 -
地域支援事業に関する情報提供:
要介護認定には至らなかったが支援が必要な高齢者向けの事業(配食サービス、見守り、家族支援など)について、情報提供や利用相談を行っています。
介護保険制度や高齢者福祉に関する疑問や困りごと全般について、どこに相談して良いか迷った場合は、まずは地域の介護保険課に電話または窓口で尋ねてみるのが、適切な情報や支援に繋がる第一歩と言えるでしょう。
ワンポイント:
介護保険課の職員は、制度の専門家ですが、個別のケアプラン作成や具体的なサービス調整は、認定後にケアマネジャーや地域包括支援センターが行います。介護保険課は制度の行政手続き窓口、ケアマネジャーや地域包括支援センターはサービス利用の計画・調整窓口、という役割分担を理解しておくと、相談がスムーズになります。
この記事が、介護保険課の役割や、必要な時にどのように利用すれば良いのかを理解する一助となれば幸いです。