【丸善雄松堂】とは具体的に何を提供しているのですか?
丸善雄松堂株式会社は、日本の学術・研究機関や専門家、図書館などを主な顧客とする、学術情報、専門書、および関連サービスを提供する企業です。単なる書店や出版取次とは異なり、国内外の広範な学術資料の調達、管理、提供、さらに研究活動をサポートする様々なサービスを展開しています。
提供している主な製品・サービス
提供内容は非常に多岐にわたりますが、中核となるのは以下の分野です。
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国内外の学術書籍・専門書の提供:
人文科学、社会科学、自然科学、医学、工学など、あらゆる分野の専門性の高い書籍を取り扱っています。特に海外の大学出版局や専門出版社の書籍に強く、直接輸入・調達を行うことで、国内では入手困難な資料も提供しています。
新刊の提供はもちろん、稀少な古書や限定資料の探索・提供も専門的に行っています。 -
学術ジャーナル(雑誌)の提供・管理:
国内外の膨大な数の学術ジャーナルについて、購読手配、ライセンス管理、アクセス提供を行っています。特に、近年主流となっている電子ジャーナルについては、大学図書館などが多数の出版社やプラットフォームのジャーナルを一元的に管理し、利用者に提供するための複雑な手配や技術的なサポートを担っています。
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データベース・電子リソースの提供:
論文データベース、統計データ、電子書籍コレクション、オンライン事典、レファレンスツールなど、学術研究に不可欠な様々な種類の電子リソースを提供しています。各機関のニーズに合わせて最適なデータベースを選定し、契約、導入、利用支援まで包括的にサポートします。
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図書館システム・サービスの提供:
大学図書館などが蔵書管理、利用者管理、貸出返却、OPAC(オンライン蔵書目録)などを効率的に運用するための図書館システム(ILS)を提供・構築しています。システムの導入・運用支援だけでなく、図書館の運営に関するコンサルティングや業務支援も行っています。
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学術研究サポートサービス:
研究者が研究活動を円滑に進めるための様々なサービスを提供しています。これには、文献調査支援、情報管理ツールの提供、論文投稿支援、学術翻訳・校閲などが含まれる場合があります。また、研究成果の可視化や分析に関するソリューションも提供することがあります。
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学術出版支援:
研究者や学会が自身の研究成果を出版する際の支援も行っています。書籍の企画・編集・制作、学会誌の発行、オンラインジャーナルプラットフォームの構築・運用など、出版に関わるプロセス全体、あるいは一部をサポートします。
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教育・研究関連用品の提供:
専門書籍や情報リソースに加え、研究に必要な実験器具、試薬、教育用機器、科学模型など、幅広い学術・研究関連用品の調達・提供も行っています。
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稀覯書・古書の提供とコンサルティング:
特に歴史的に価値のある稀覯書や古書の収集、評価、提供に強い専門性を持っています。図書館や研究機関が特定の古書コレクションを形成する際の相談に応じたり、海外のオークションなどから資料を調達したりするサービスを提供しています。
なぜ、大学や研究機関は丸善雄松堂を利用するのですか?
大学や研究機関が丸善雄松堂を主要な取引先とする理由は複数あります。
最も大きな理由は、取り扱う資料の専門性と多様性、そしてそれらを効率的に調達・管理する能力にあります。国内外の膨大な学術出版社やデータベース提供元とのネットワークを持ち、個々の機関が必要とする特殊な資料やライセンスをまとめて手配できる力は、個別の図書館や研究室では到底真似できません。
例えば、ある大学図書館が100社の異なる海外出版社から電子ジャーナルを購読し、さらに20社の異なるベンダーからデータベースのライセンスを購入する場合、それぞれと個別に契約交渉、支払い、技術的な設定を行うのは膨大な手間と専門知識が必要です。丸善雄松堂のような業者は、これらを一括して引き受け、契約条件の交渉、円滑なアクセスの確保、年間契約の更新管理などを代行します。これにより、図書館職員は資料の選定や利用者サービスなど、本来の業務に集中できるようになります。
また、長年の経験に基づく学術情報流通に関する深い知識と、図書館運営や研究活動に関するコンサルティング能力も重要な要素です。単にモノを販売するだけでなく、学術情報の利用環境全体を最適化するためのアドバイスやソリューションを提供することで、機関のニーズに応えています。
さらに、学術資料は一般書籍と異なり、複雑なライセンス形態や利用条件、長期保存に関する課題が伴います。これらの専門的な側面に対応できる信頼性と実績も、選ばれる理由となっています。
丸善雄松堂の物理的な店舗やサービス窓口はどこにありますか?
丸善雄松堂は、そのビジネスモデルの性質上、一般の大型書店のように全国に多数の店舗を展開しているわけではありません。主なサービス提供形態は、法人顧客(大学、研究機関、企業など)への直接営業、および専門性の高いサービス窓口です。
主なアクセス方法と拠点
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法人営業部門:
大学や研究機関、企業の図書館・情報部門などに対して、専任の営業担当者がつき、直接訪問やオンラインでのやり取りを通じてサービスを提供します。これが最も主要な顧客接点です。具体的な営業拠点(支店など)はありますが、これらは主に商談や事務を行う場所であり、一般の顧客が自由に出入りして商品を選べる店舗とは異なります。
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専門店舗・窓口:
かつての「丸善」が持っていた一般書店としての機能は、丸善雄松堂とは別の会社(丸善ジュンク堂書店)が引き継いでいます。しかし、丸善雄松堂として、特定の専門分野に特化した機能を持つ店舗や窓口が存在する場合があります。例えば、大学構内にある「生協」のような書店の一角で専門書を取り扱ったり、特定の研究分野に特化した資料相談窓口を設けたりすることがあります。これらは誰でも自由に入れる一般的な書店というよりは、特定の顧客層や目的に特化した場所です。
また、東京・日本橋にある「丸善日本橋店」の一角など、かつての本社機能や稀覯書部門の一部が、特別な展示やサービスを提供しているケースもありますが、これも一般の書籍販売フロアとは区別されることが多いです。
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オンラインプラットフォーム:
法人顧客向けには、契約した電子リソースにアクセスするための専用プラットフォームを提供しています。また、一部のサービスや資料に関する情報は、同社の公式ウェブサイトを通じて提供されています。ただし、個人向けに広く書籍や商品を販売するECサイトのような機能は、ビジネスの性質上、限定的です。
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イベント・展示会:
学術会議や図書館関連の展示会などにブースを出展し、サービス紹介や資料展示を行うことがあります。これは特定の時期に、専門家が集まる場所での顧客接点となります。
結論として、「丸善雄松堂の店舗に行って本を買う」というイメージは、一般の書店とは異なります。主な利用は、大学や研究機関が法人契約を通じて、営業担当者やオンラインプラットフォーム経由でサービスを受ける形となります。
丸善雄松堂のサービスや資料の価格はどのくらいですか?
丸善雄松堂が提供する製品やサービスは、その種類、形式、利用範囲、契約期間などが多岐にわたるため、「いくら」と一概に答えることは非常に困難です。価格は個別の契約内容によって大きく変動します。
価格を決定する主な要因
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資料の種類と形式:
- 単行本: 一般の専門書に近い価格帯ですが、輸入書や稀少本は為替や入手難易度により高価になります。
- 学術ジャーナル購読: 出版社、タイトル、購読期間、印刷版か電子版か、さらに電子版の場合は利用できる人数や拠点(サイトライセンス)によって価格が大きく異なります。著名な国際ジャーナルは年間数十万円~数百万円に及ぶことも珍しくありません。
- データベース・電子リソース: 含まれる情報量、収録期間、同時アクセス数、利用機関の規模(学生数・研究者数など)によって価格が決定されます。年間契約で数十万円から数百万円、大規模なものでは数千万円以上となる契約もあります。
- 稀覯書・古書: 資料の歴史的価値、保存状態、希少性、市場での需要などによって価格が決まります。個別の資料ごとに査定が行われ、非常に高額になるケースも多々あります。
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契約形態:
個人で購入する場合と、大学などの機関が複数年契約やサイトライセンス契約を結ぶ場合とでは、価格体系が全く異なります。機関向けの契約は、提供元との複雑なライセンス交渉を経て価格が決定されます。
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サービス内容:
図書館システム導入、コンサルティング、論文翻訳・校閲、出版支援などのサービスは、提供する内容や関わる工数、専門性によって個別に見積もりが作成されます。プロジェクトの規模によって価格は大きく変動します。
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為替レート:
海外の出版物や電子リソースの多くは外貨建てで取引されるため、為替レートの変動が価格に直接影響します。
したがって、「丸善雄松堂でこのサービスを利用するにはいくらかかりますか?」という問いに対する正確な答えは、具体的な資料名やサービス内容、利用機関の情報を伝えて、個別に見積もりを取る以外にありません。
丸善雄松堂を通じて書籍やジャーナルを購読するにはどうすれば良いですか?
丸善雄松堂を通じて書籍やジャーナルを購読する「方法」は、あなたが個人であるか、大学や研究機関などの担当者であるかによって大きく異なります。
機関担当者の場合(大学図書館など)
これが丸善雄松堂の主要な顧客層です。プロセスは通常、以下のようになります。
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担当者との連携:
丸善雄松堂には、各機関(大学、研究所、企業など)に専任の営業担当者がついています。新しい資料の導入や既存契約の更新については、この担当者と相談することから始まります。
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情報の収集と選定:
機関のニーズに基づき、担当者から国内外の新しい書籍やジャーナル、データベースなどの情報提供を受けます。学内の研究者や教員の要望を取りまとめ、導入を検討する資料を選定します。電子リソースの場合は、トライアル利用を提供してもらうことも可能です。
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見積もりと契約交渉:
導入を決定した資料やサービスについて、丸善雄松堂から見積もりが提出されます。特に電子リソースについては、利用条件(アクセス方法、同時アクセス数、利用対象者、利用可能な機能など)について詳細な交渉が行われ、ライセンス契約が締結されます。
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発注と支払い:
契約内容に基づいて正式な発注が行われます。支払い条件も法人契約に基づきます。
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納品・アクセス設定・利用開始:
書籍であれば納品され、所蔵処理を経て利用可能になります。電子ジャーナルやデータベースの場合は、提供元(出版社やベンダー)との連携により、機関からのIPアドレス認証やID/パスワード設定など、利用するための技術的な設定が行われます。丸善雄松堂はこれらの設定作業やトラブル対応をサポートします。
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継続的な管理:
年間契約の更新、利用状況の確認、新たな資料の追加検討など、継続的なやり取りが続きます。
このプロセスは、多数の資料や複雑なライセンスを扱う機関にとっては、個別に行うよりも遥かに効率的かつ確実な方法となります。
個人の場合
個人として丸善雄松堂から直接専門書や学術資料を継続的に購入するケースは、機関の利用と比べると限定的です。
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専門的な実店舗での購入:
もし丸善雄松堂が運営する、または関与している特定の専門分野に特化した実店舗が存在する場合、そこで購入できる可能性があります。(ただし、これは一般的な書店とは異なります)。
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稀覯書・古書の購入:
稀覯書や古書の購入を希望する場合、丸善雄松堂の専門部署に直接問い合わせて相談するという形になるでしょう。これは一般的な商品購入とは異なり、資料の探索や評価から始まる特別なプロセスです。
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オンラインサービス:
一部、個人向けのオンラインサービスや、特定の専門分野の書籍を扱っているウェブサイトがあるかもしれませんが、一般的な書籍購入サイトとしての機能はメインではありません。個人で国内外の専門書を購入したい場合は、丸善ジュンク堂書店などの一般書店や、他のオンライン書店、あるいは海外の書店を直接利用する方が一般的です。
個人が丸善雄松堂を利用するのは、非常に専門的・限定的なニーズ(例:特定の稀覯書の探索)がある場合がほとんどです。
丸善雄松堂はどのようにして学術・研究活動をサポートしているのですか?
丸善雄松堂は、単に資料を提供するだけでなく、様々な形で学術・研究活動そのものをサポートしています。
具体的なサポート方法
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情報アクセスの最適化:
研究者が必要とする学術ジャーナル、データベース、電子書籍などに、大学や研究機関内から円滑かつ効率的にアクセスできる環境を構築・維持することを支援します。複数のプラットフォームに分散した情報源へのシングルサインオンや、学外からのリモートアクセス設定など、技術的な課題解決もサポートします。
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研究テーマに沿った文献・資料の提案:
特定の研究テーマや分野について、国内外の新しい研究成果や重要な古典資料などに関する情報を提供し、研究者が知見を広げたり、新たな文献を見つけたりする手助けをします。これは、担当営業や専門部門が持つ広範な情報ネットワークと知識に基づいています。
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研究ツールやサービスの提供:
文献管理ツール、引用文献データベース、研究ノート作成ツールなど、研究プロセスを効率化するためのソフトウェアやオンラインサービスの提供・導入支援を行います。
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研究成果の発信支援:
論文の国際誌への投稿に関わる英文校閲や翻訳、学術図書の出版サポート、学会誌やプロシーディングの発行支援を通じて、研究成果を国内外に発信するプロセスをサポートします。機関リポジトリの構築や運用支援も含まれることがあります。
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図書館の機能強化支援:
図書館が研究活動のハブとしての役割を果たすための支援を行います。これには、最新の図書館システムの提供、デジタル化サービスの支援、研究データ管理(RDM)に関するソリューション提供、利用教育プログラムのサポートなどが含まれます。
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稀覯書・アーカイブ資料の整備支援:
大学などが所蔵する貴重な学術資料やアーカイブの整理、保存、デジタル化、公開に関する専門的なコンサルティングや実務支援を行います。これにより、過去の研究遺産が未来の研究に活用されるようになります。
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学術イベントの開催・支援:
学術情報に関するセミナーやワークショップ、出版社やベンダーとの連携による新サービスの紹介イベントなどを企画・開催し、研究者や図書館員の情報収集やスキル向上を支援することがあります。
これらのサポートは、研究者が本来の研究活動に集中できる環境を整え、学術情報の流通を促進し、研究成果の最大化に貢献することを目的としています。単なる「情報の売り手」ではなく、「研究活動のパートナー」としての側面が強いと言えます。
丸善雄松堂の「雄松堂」部分は何ですか?
丸善雄松堂は、2010年2月1日に、株式会社丸善と株式会社雄松堂書店が合併して誕生した会社です。この「雄松堂」は、合併前の一方の当事者である「株式会社雄松堂書店」に由来します。
株式会社雄松堂書店は、1932年創業の歴史を持つ企業で、特に海外の学術書や稀覯書、古書、さらにマイクロフィルムなどの特殊資料の輸入・販売において長い歴史と高い専門性を持っていました。戦後、日本の大学や研究機関が海外の最新の研究成果にアクセスする上で、雄松堂書店は重要な役割を果たしました。特に人文科学分野や歴史資料の取り扱いに強みを持っていたと言われています。
一方、丸善は、創業以来、幅広い書籍・雑誌の販売、出版、文具・事務用品販売などを行ってきた大手企業です。特に学術分野では、国内外の書籍やジャーナルの取り扱いにおいて、雄松堂書店とは異なる顧客層や強みを持っていました。
この二社が合併したことで、丸善が持っていた学術情報流通における広範なネットワークやシステム構築能力と、雄松堂書店が持っていた特に海外稀覯書・古書、特殊資料に関する深い専門知識と調達能力が融合しました。その結果、丸善雄松堂は、現代の電子情報リソースから歴史的な古書まで、学術研究に必要なあらゆる種類の情報をワンストップで提供できる体制を強化しました。
したがって、「雄松堂」の部分は、丸善雄松堂が受け継いだ、海外学術資料や稀覯書・古書に関する長年の専門性と伝統を象徴していると言えます。